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日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物


11 京都の夏は何故アツイ?

<変化しつづける精神と開かれていることへのリスペクト>

以上のように、フランス公演で「暑い夏」に対する役割を果たし、一昨年より再び「暑い夏」の講師陣に加わっているサンチャゴさん。その間ヨガの教授資格を得た彼が今招かれる理由は、日本でのコンテンポラリー・ダンスにおける人々のニーズの変化と無関係ではないようだ。


サンチャゴ「ヨガは新しいポイントで面白かったですね。ここの参加者にヨガの経験者がいることにはすぐ気づいたけど、ダンスのワークショップ・フェスティバルでヨガってのは聞いたことがないですし(笑)。時代も変わったんですね。ヨガが必要とされるっていうのは、人々がセンターを失っているっていうことだろうから。何か新しいことが起こるのかも知れません。そこはまた東洋と西洋の出会いの場ともなるわけだし。常に新しいものを取り入れて、創造性を保つのがここのよさです。」

この変化について、坂本さんは、「暑い夏」のネットワーク化を通して得られた経験から、次のように説明する。


坂本「今、日本でコンテンポラリー・ダンスのシーンはすごく変化しています。『暑い夏』のネットワークも他の都市にも拡がっていってて、講師を他の都市に紹介するってことを始めました。昨年サンチャゴは松山に行ったけど、松山の人も4、5年前に初めて『暑い夏』にきて、ダンスと言われているものだけがダンスでないと気づいて、何がダンスかとか、ダンサーにとって年をとることが何を意味するかとかを、反省するようになったらしいんですね。それでサンチャゴを呼びたがったんです。松山のダンサーはみんな若いんだけど、先生の 大野八重子さん は、彼らにボディワークとしてのダンスだけを与えたくはなかった。だからマインドのほうもってことで。」

サンチャゴ「重要なポイントだと思います。松山のダンサーは若い人ばかりだけど、あそこでも何かが起こっていますね。日本全体でどうこうということはわからないけど、世界のコンテンポラリー・ダンスは、『京都の暑い夏』で起こっていることを知らなくちゃ。スペインでも、オランダでも似たような面白いシーンはあるので、ここもそういった場所とネットワークをつくっていければ。現実にはどうなるかはわからないけど、今、そういう時期なんじゃないでしょうか。」

このように、ダンスを取りまく様々な状況とともに「京都の暑い夏」も現在進行形で変わり続けている。そんな「暑い夏」の現在と未来について、10年前を知るサンチャゴさんだからこそ、言葉にできること、言いたいことがあるようだ。


サンチャゴ「本当によくオーガナイズされていると思います。わたしは初めからのストーリーを知っているのだから、なおさらそう言う必要がある。稀にそのよさを理解しない講師がいますが、ここをオーガナイズすることがどれだけ大変かわかっていないのです。場所やスタッフにお金もかかるし、時間もかかる。フランスでは、何もないところからここまで場所を作り上げた例など、一つも知りませんよ。
未来のためにひとつだけアドヴァイスをするとしたら、『暑い夏』の意義、フィロソフィーをもっと人に説明しなさいということです。記録は重要ですよ。説明しないと、特に西洋の人々には伝わらない。ここのスピリット、何故これを立ち上げたのか、どのような意義があるのか、こういった人々を選んだのは何故か、文章にしなさい。そうじゃないと、ここに喚ばれて来ている人の中にも、その意義をわかっていない人、単なるアートセンターと思っている人がいるかも知れない。」

では、広い意味ではその記録の一端となるであろうこのインタヴューを、サンチャゴさんの言葉で締めくくってもらうことにしよう。


「私は今50歳ですが、再びここに喚ばれて幸せに思います。変化し続け、探し続ける精神。開かれていることへのリスペクト。こういった性質が保たれることを願っています。『暑い夏 Hot Summer』はホットです。リサーチなんだけど閉じられた研究ではなく、人々が共有できるようなね。」

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