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日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物


11 京都の夏は何故アツイ?

<11年目を迎えてーcrossing pointとしての「京都の暑い夏」>

実は先の記事のもととなるインタヴューは、dance+の輪郭も定まらぬ昨年の「暑い夏」の折りにいただいた。ファッションのように日本に紹介され定着してきたコンテンポラリー・ダンスの中に、共有され伝承されるべきものの見方やスキルが生まれつつあるのではないか。いやむしろ、日本のコンテンポラリー・ダンス全体を見渡せば、そろそろそういったものが生まれていないとやばいでしょう。当時そんなことを考えていて、10周年を迎えた「暑い夏」を取りまく関係性と、そこで蓄積されてきた経験には、伝えるべきなにがしかの知恵ーサンチャゴさん言うところの「フィロソフィー」ーが潜んでいると思われたからだ。

さて、記事をまとめるにあたり、今年のプログラムを見てみると、「伝える」こと、「共有する」ことを時間軸(次の世代へ)、空間軸(地域のコンテンポラリー・ダンス)に伸ばしてゆくかのようなプログラムが新たにお目見えしている。“べき”な内容となるかどうかはお楽しみとして、早速、この新しい企画の意図について、事務局からコメントを寄せていただくことに。




 
  今年の「暑い夏」フライヤーdesigned by pri graphicsphoto by Toshihiro Shimizu
 
+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + 「京都の暑い夏」事務局

「今回のフェスティバル全体を通じてのコンセプトなのですが、単に著名な振付家・ダンサーの踊りを学べたよかったなあーで終わるプログラムでなく、その後も四方八方に、暑い夏を交差点にしてダンサーが飛躍していける、そういう環境作りを心がけています。そういうわけで今年のフェスティバルのテーマはズバリ「Crossing Point」。京都を交差点に、様々なダンスを巡る潮流が入り交じり合い、また流れ出していく、そういうイメージです。2つのプログラムを加え、新しい試みもスタートします。」

+ Pointその1 「関西ダンスカンパニー・レパートリーWS」

「レパートリーWS、正しくは「関西ダンスカンパニー・レパートリーWS」は、その名の通り、関西で今注目のダンス・カンパニーに焦点を当てていて、今回のフェスティバルのテーマの象徴のようなプログラムでもあります。

一般に「ダンスWS」というと有名な振付家か、カンパニーのダンサーを講師として迎えて、その振付家なりカンパニーのダンスの方法論を教えて貰うという形です。まあ、時にはデュエットのユニットだと2人共を講師として迎え入れる形はあると思いますが、予算の関係でなかなか難しいものがあります。またWSの内容も振付家・ダンサーそれぞれ自分の方法を持ってたりして、いきなり自分の振付けをぶつけてくるようなことはなかなかない。それはそうです物事には段階があるから。

一方でダンスカンパニーということを考えると、ソロやデュオとは違った、創作のプロセスと技法やコンセプトを複数のダンサーの間で維持・発展させていくやり方があります。もちろん、ダンスカンパニーというと振付家の才能だけが全てではありません。その創作の現場で発揮するダンサーのエネルギーや創意・工夫が作品の出来を大きく左右するのです。そのカンパニー毎に違うだろう、集団創作の有り様そのままを伝えることはできないかと思ったわけです。ダンサーにとっては自分の気になるダンスカンパニーがどのようなレッスンをして、どのようなプロセスを経て作品を作っているのか? 気になるあの作品のあの部分はどうやって作っているのか? そうした疑問に応えてくれる場はなかなかありません。

そこで、単に振付家の提供するWSでなく、「ダンスカンパニーの提供するWS」が企画できないかと考えました。関西で活躍するカンパニーの作品の中から自分達の代表作で自信を持って提供できる部分をカンパニーのダンサー自らデモンストレーションしてもらい、振付家から作品の考え方等教えてもらいながら、ダンサーにテクニカルな部分を指導してもらえる。贅沢なWSではないかなと思ったわけです。
集団創作の中で散る火花の一端を身体で味わって頂く。それがこのWSの狙いです。」

+ Pointその2 「研修生エクスチェンジ・プログラム」

「さらにこの副産物として考えていることがあります。関西のダンスカンパニーの現状として、新しいカンパニーのダンサーを募る「オーディション」を行っているところは皆無に近いと思います。ダンサーにとってみればそれだけ、現在活躍中のカンパニーに自分を知ってもらう機会は少ないわけで、「暑い夏」でのWSを介して、これからやる気の若手のダンサーとカンパニーとが出会う機会になればと願っています。

2、3年後に、このWS受講者が今回のWSをして頂くカンパニーで踊っている、なんてことがあれば素敵だと思うのです。

なお、このWSの中から1名を選出してフランスはアンジェの国立振付センター(芸術監督:エマニュエル・ユイン)に研修生を送り出す予定です。アンジェは、90年代のフランス・ヌーベルダンスの旗手「レスキス」の築いたセンターとして有名なところで、同時にコンセルバトワールを併設し、この春来日したトリシャ・ブラウンのレパートリーに1ヶ月かけてかけて取り組むなど意欲的な試みに挑んでいます。芸術監督のエマニュエルは「暑い夏」でも講師を勤めて貰ったこともあり、今回の研修生派遣のプログラムにとんとん拍子で進みました。同プログラムはアンジェとのエクスチェンジ・プログラムとして開催するので、アンジェからは2名のダンサーをこのフェスティバルに受け入れます。彼らが、関西のダンスカンパニーのレパートリーを踊ってみて、何を感じ、どう思うでしょうね。楽しみです。」

+ Pointその3 「KID'sプログラム」

「子供のためのダンスクラスも今年初めて開催なのですけど、構想は割と古くからありました。ただ、それを開催するための方法論も何も事務局になかったので、なかなか現実化できずにいました。この2,3年、事務局のスタッフはほぼ全員ダンサーや振付家なのですが、子供達とパフォーマンスやWSで出会う機会が序々に増えてきました。

プログラム・ディレクターの坂本(Monochrome Circus)なども昨年秋に仙台で子供達と舞台を作る強烈な体験をしてきて、ぜひあの感動をアゲイン!!みたいな感じですし、他のスタッフで子供向けのクラスを開いているダンサーもいます。背景には現在の子供を取り巻く環境があってそれはここで述べる必要は無いでしょうけど、ダンサーの中にも相当な危機感を募らせている人、自分でも何かしたいという人が沢山いるということです。

今回はさらにこの子供クラスに限ってボランティア・スタッフを募りました。ボランティアとはいえこのフェスでボランティアを募るのは初めての事です。フェスティバルというと1年に一回のことですが、これを機にできるだけ沢山の子供達と、そしてダンスと社会とのつながりに関心のある方々に集まって貰うきっかけになればと思っています。現時点(4/3)で、WS申込の子供の数より、ボランティア申込の方の数の方が多い、しかも東は東京、西は九州という広範囲からこのボランティアの申し込みがあるという、珍現象が起こっていて、関心の広がりを感じています。

 プログラム実現のきっかけとしては、Underlineの小鹿ゆかりがスタッフとして参加してくれたことが大きいですね。ダンスの制作に限らず、広くアートと社会のつながりを考えて行動している人なので、彼女が提案してくれて、やっと実現しかけているのが今回のKID'sプログラムです。」

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