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日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物


34 アジアの現在 LIVE ARTS BANGKOK

《8月6日 16:40-19:00@ボイが講師を務める母校、パタナーシン大学の教室》

 リハーサル5日目。この日は、ボイの都合で、彼が非常勤講師をしている母校、パタナーシン大学の芸術学部の一教室で、リハーサルを行った。リハーサルの少し前に校内に着いたので、少しレッスンを見学させてもらった。

■ タイダンサーにコンテンポラリー・ダンスを教える

 パタナーシン大学はバンコクにあるタイの国立芸術大学。舞踊科と音楽科に分かれるが、タイの伝統芸能を専攻する学生が圧倒的多数を占める。舞踊科にはバレエやモダンダンスといったいわゆる西欧の舞踊を専攻する学生もあるが、このクラスはタイの伝統舞踊を専攻する学生の必須科目として開講されているコンテンポラリー・ダンスのクラス。今回の授業では、コンタクト・インプロビゼーションのテクニックを学生たちに教えていた(ただし、こういう授業が登場したのはつい3年ほど前からであるとのこと。それまでコンテンポラリー・ダンスの実践的な授業が同大学で開講された例はない)。
 ボイのクラスの特徴は、古典舞踊を専門とする学生に対して、コンテンポラリー・ダンスの手法を教えるという目的にある。学生が様々なコンテンポラリーやモダンのダンステクニックやコンテンポラリーのコンセプトを用いながら、そこにタイ舞踊のテクニックを混合させて、新しい創作活動を行えるように工夫を凝らしている点が、私にとっては大変興味深い。ボイ自身は、学生の頃、こうしたテクニックを教えてくれる先生が学内におらず、個人的に外国人を中心とした先輩ダンサーから学んだという。


 


 
 
 
                    まずは身体の緊張しやすいタイダンサーの身体をほぐす歩き方(左)
コンタクト・インプロビゼーションの手法を使って、ペアで体重をかけながら動く。タイ舞踊の型を取り入れている(右)



 ボイの授業が終わって、残さんとのリハーサルが始まる。前日リハーサルが休みになったために、とりあえず、覚えているところまでやってみようということになった。テキストを見ず、振り付けを完全に頭と身体に入れる作業である。最初は短いスパンだったが、徐々にそれが長くなっていった。しかし、今回の作品はボイにとってもとにかく覚えるのが大変で、なかなか最後までたどりつけそうにない。ボイが思わずたちどまってしまうと、そのすきに、残さんから細かい指示が入る。


 
 
 
                                        リハーサル風景


 リハーサルを見ていると、一行ずつ、または、シーン毎に、それぞれが一つ一つ完結していると思っていたものが、実はそうではないことに気づかされる。残さんからボイに投げられる、実に細やかな説明を横で聞いていると、この作品が持っている「行間」の厚みを意識させられてしまう。行間には無数の理路がながれ、それが身体的と論理の結びつきによってはっきりとした道筋となって浮かび上がってくるようだった。ただテキストが並んでいるのではなく、行間に隠れた物語を編むように演じて行くと、作品に流れが生まれる。構成が美しいなぁと私には思えてしまう。

 リハーサルの後、残さんと夕食をとりながら、改めてコラボレーションへの思いを聞いてみた。

いわさわ 「残さんの今回の作品は大変『理路整然』としているという感じがするのですが、いつもそういう感じなのですか?」

残 「違います。どちらかというと、いつもは何度も練習を重ねて、その中でダンサー自身が理解するのを待っています。ダンサーの方から『これはこういうことですよね』と言われるまで何も言わないんです。ダンサーにいちいち具体的で細かい指示を与えるというのは、今回特別にしていることです。時間の制約もありますし。僕の作品は、混沌のなかから何かがわきあがってくる感じの方が普通ですが、今回はボイが悩むと行けないので、振付をする段階で、理路整然としているように、そこに一番集中しています。コレオグラファーとして、ダンサーそれぞれが出すかたちの違いを楽しみたいと思っているのですが、ボイの場合は、タイ人で古典舞踊にルーツをもつコンテンポラリーのダンサーとして、今のところ僕の想定の範囲で動いているように思います。もっと違ったものが彼のなかから生まれてくるといいいのですけれど、今回はやっぱり時間が少ないので難しいかもしれません。とはいえ、ボイは僕が思っていた以上のダンサーだったと思います。普通練習を1日でも休むとダメになる(また一からやり直し)になるので、1日でも休みを取りたくなかったのですが、昨日突然お休みになってしまって心配しました。でも彼はその前よりも振りを覚えているし、むしろ前より良くなっているのです」

 海外に滞在しその地のダンサーに振り付けをするというコラボの作業を行ったのが初めての残さん。いろいろ試行錯誤があるようだ。

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