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日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物


26 京都の暑い夏2007ドキュメント Vol.1



                 踊ろうとしないダンス

                                     レポーター:大藪もも
                                     写真:佐藤圭一郎

Contact/Partnering C-1 4月13日(金) 19:00〜21:00 4月14日(土) 13:00〜15:00/15:30〜17:30 4月15日(日) 13:00〜15:00/15:30〜17:30 全5回 
[概要] コンタクト基礎講座。様々な個性を持った「他者の身体」を聴き、身体が生み出すムーブメントを通じて理解を深めていくことを重視します。ここではいわゆるダンステクニックは必要ありません。「他者」とふれる中で、身体のセンセーション、相互の身体をリスペクトすること、そしていかにコミュニケーションをとっていくかということに焦点をあてていきます。五感、六感総動員でトライ!!(ダンス未経験者も参加できます)





 
  坂本公成+森裕子(日本/京都)ダンスカンパニーMonochrome Circusを主宰。身体を通じたコミュニケーションに興味があり、自身のカンパニーや、種々の企画のディレクション、コンタクト・インプロなどを実践してきた。その作品は13ケ国23都市で紹介されている。最近作は、90cm×90cmのテーブル上でのデュエット『水の家』。アゴタ・クリストフの同名戯曲をダンス化した『怪物』。テーブル・ピース第2弾『きざはし』など。それぞれ各地で再演を重ねている。身体と身体の対話という「リアリティー」、想像力と創造力の交差という「フィクショナリティー」、そのどちらもが交錯する<場>として、広く深く「コンタクト」を追求している。坂本は平成13年度京都市芸術文化特別奨励者。(提供:京都の暑い夏)
 
 

 
 まずは今回初めて暑い夏の会場となった滋賀会館についてレポートしちゃいます。WSの場所としてこれほど大きなホールの舞台上が使えるなんてめったにないのではないでしょうか。私も初めて行ったときはまさかそんなところだとは思わず、滋賀会館は目の前なのに想像上の“小さな滋賀会館”を探してしまいましたが、京都会館みたいな普通の劇場の舞台上がWS会場です。
 高い天井からの照明や、ずらっと並ぶ客席、広さも、高さも、光も、そして劇場という構造そのものが持っている不思議な引力のようなものも感じずにはいられませんでした。それらはいずれも動きのインスピレーションを刺激してくれる、思考のおやつになります。
 

 
 

 
 さて、そんな滋賀会館レポートはこのくらいにして、ワークショップ(以下WS)の内容にうつりましょう。このWSは初心者の方でも受講可能ということで、初めてダンスのWSに参加するという方も幾人かいらっしゃいましたが、坂本&森WSのリピーターもちらほらいましたね。私もそんなうちの一人です。

 ワークの要素を大雑把にいうと、自分の身体を聴く、相手の身体を聴く、そして互いの身体で会話するという三つをあげることができると思います。ただし、三つのそれぞれは互いにつながりあっているので、一つにつき一つのワークがあるというのでもありません。
 たとえば、ペアをつくって一人が形を作ってポーズを決め、もう一人が目を閉じてその人にふれることで相手の形を探るというワークがありました。これは一見相手の身体を聴くというワークのようで、自分の身体を聴いていることになります。というのも、当然ですがお互い人間なので大まかな骨格は変わりないのです。相手の身体を見つめているようでいて、同時に自分の身体をも見つめていることに気がつきます。ふれた部分、例えば手にふれたら、その向きや位置を同じように自分で試してみて、他の部分がどうなっているのか予想しながら、探っていたりするのです。
 自分と他人が同じ骨格を持っているというのは当たり前のことですが、それ以上に自分と他人は違うものだという意識が強いのでしょうね。目を開けたときに相手と同じポーズをしていたときのうれしさは、単なる達成感ばかりではなく、改めて自分と他人との間に共通したものがあることを確認するうれしさを含んでいると思います。
 

 
 さらにこのワークは展開して、お互いに目を閉じてどちらともなく相手を聴き、相手に聴かれ、相手に話し、話しかけられるというランダムな設定になります。こうなってくると、もうどちらが話していて、どちらが聴いているのかわからなくなります。耳は常に相手に寄せているのですが、動き自体はどこまでも私のものであり、また、相手も同じように私に耳を傾け、自らの動きを生み出しているわけです。それは相手の動きを聴いて、それに応えるというよりは、二人ともがボールを投げて交じり合ったものを共有しているような感じです。
 そういう瞬間は非常に混沌としていて、内に入りがちで周りが見えにくくなってしまいます。この瞬間が心地よいようで、でも、なんか違うような気がしていました。たぶんそういうときは空間を忘れているんですね。ふと床の溝の方向性に注意が向いた瞬間に耳が増えたみたいで、景色が広がりました。自分と相手と空間と共にコンタクトしているわけです。
 

 
 このWSに参加していると、コンタクトがダンスなんだったら、ダンスって何なんだろうと思ってしまいました。私はダンスは踊るもんだと思っていたのですが、このWSでは私は踊ろうとしたのではなく、常に聴こう、話そうとしていたのでした。身体で聴いて、話して、お互いに共有できるものを捜し求めていく作業によって、普通に言葉を交わすだけでは分かり合えないものも共有される瞬間があったと思います。
 そういえば、このWSの受講者は休憩中も良く話していましたよね。これを書くためにたくさんの写真を見ながら、楽しく過ごしたひとときをなつかしく思い出していました。
 

 

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