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日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物


26 京都の暑い夏2007ドキュメント Vol.1


                 怠け者ダンサー

                                     レポーター:真下 恵
                                     写真:佐藤圭一郎

Body Work/ Basic B-2 4月27日(金)〜30日(月) 13:30〜15:30 全4回
[概要] 呼吸、身体の重さ、重力、空間、エネルギーの流れなどの諸要素を理解し、ベーシックな鍛錬を積み上げていきます。





 
  チョン・ヨンドゥ(韓国/ソウル)西洋的な高度なダンスメソッドと明確なコンセプトを併せ持つと同時に、東洋的に抑制された繊細な動きが彼の才能を裏付けている。Doo Dance Theater主宰。韓国を拠点に世界各地で活躍する。'04年にはリトル・アジア・ネットワークでアジア各地を巡回。韓国でも多くの賞に輝く他、「横浜ダンスコレクション・ソロ&デュオコンペティション」にて、「横浜文化財団大賞」ならびに「駐日フランス大使館特別賞」を受賞、フランス国立トゥルーズ振付センターにて研修する。韓国新進気鋭の振付家である。'06年には「第5回アトリエ劇研演劇祭」「青山ダンス・ビエンナーレ」にてソロ作品を上演。(提供:京都の暑い夏)
 


 「Try to be a lazy dancer.(怠けたダンサーになってください)」

 ワークショップが終了して数週間たった今も、不思議と耳に残るヨンドゥさんの言葉です。

 今回私は参加せず、外からの目として見学させていただきました。参加者はだいたい20人前後で、ベーシック・クラスということもありダンス経験の少ない方が多かったようです。ダンス経験が少ない、つまりは自分の身体を意図的に動かす機会が少ないということ。
 何かの目的のために自分の身体を動かすのであって、その動き自体が目的ではないというのが日々日常の生活だと思います。しかしクラスの中で、そういった日常の動きが目的そのものになったとき、どうしてそんなにも動きづらくなってしまうのでしょう?

 

 
 ヨンドゥさんの最初のクラスのエクササイズは、立っているところから素早く仰向けに横たわり、そこからまた起き上がること。とてもシンプルです。最初にヨンドゥさんがお手本を見せてくれました。難しいテクニックを使っている様子もなく、本当に日常よく見る風景で特に目立ったところもありません。
 次に受講者の方が試したのですが、それが驚くほどにぎこちない! 試しに自分でもやってみた結果、「あれ、右手が最初? 左手? 足はいつ伸ばすの?」
 動き自体を意識したとたん、たちまち動けなくなるのです。

 そのあと、ヨンドゥさんはひとつひとつ丁寧に説明していきました。
 例えば呼吸の使い方。何か重いものを持ち上げるときには全身に力が必要です。そういうとき人間は無意識的にぐっと息を止めます。逆に力を抜きたいときは息を吐く。その吐き方にも何通りもあり、長く吐くか短く吐くか、強く吐くか弱く吐くか、それぞれの呼吸の仕方によって体に及ぼす影響は変わっていきます。
 次は重力、遠心力などの物理的な力の効率的な利用によって、いかに余分な筋肉を使うことなく動けるか。すべてを筋肉だけで動いてしまうと、もちろん体力の消耗もしますし、そういった自然の力がもつダイナミックさも欠いてしまいます。

 ヨンドゥさんの動きは無駄な動きがなくとても楽そうで、一見怠けた感じに見えます。でもその怠け者ダンサーの裏には膨大な量の知識と技術が潜んでいるのです。

 最終日のクラス終了後、思わず私は彼に言いました。

 「How hard it is to be lazy!(怠けるってなんて難しいのでしょうね!)」


 
  *編集部註:この記事の写真はA-2のものを、ヨンドゥさんのクラスの雰囲気を伝えるために転用させていただきました。
 

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