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 ショールーム"graf"のコンセプトは明快である。僕たちの提案するスタイルを再現するような構成で展示販売する、というものである。この方法は、ごく当たり前のようであるが、家具を中心にインテリア全般について販売する店舗が多数あるなかで、実際には希な存在である。どちらかといえば、バーやカフェに近いような空間の中で、そこを訪れた人は、僕たちの商品よりもまず空気を感じ取ってもらえる仕組みである。デザインと風合い、そしてなにより制作に携わるスタッフの小技の効いた仕上げが、家具のデザインを引き立たせている。そういった、一目でgrafのものであることがわかる家具類が商品構成の中心となっている。

  35種類あまりの定番家具のほか、別注家具にも対応し、数々の作品を様々な店舗や住宅に送り出している。その商品のほとんどを"graf"labo.において制作している。その他、"graf"labo.では家具のデザイン、制作をはじめ、店舗プロデュースに伴うグラフィックツールのデザイン、企画立案、広報などの作業が中間業者をはさまない方法で行われる。

 grafの家具のスタイルは、洋風とも和風ともとれる60年代から70年代に多く生産された家具に近い趣を持っている。なぜなら、立ち上げスタッフ全員が1970年前後生まれであり、僕たちが幼少を過ごした頃身近にあった風景をモチーフとしているからである。このことは、単なるモチーフとして扱っているだけではない。現在の僕たちを取り巻く環境に満足しているのか、といった疑問に対して、一度モダンデザインが生き生きとしていた時代にまで遡り、リセットすることによって始めてベクトルを修正できるのではないかという考えに基づいたものでもある。

  このような考えを、僕たちは商業空間のプロデュースなどをとおして表現してきている。そして、商業空間だけで表現しきれない事柄については、展覧会といった形態をとおして多くの共感を得ることに成功していると自負している。その流れの中で、2000年におけるgrafの空間に対する概念を具現化したものが、東京、大阪で行った展覧会および作品集「月は、まわったかい。」というかたちで結実した。


 
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