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 堀江のショールームを始めて2年も経つと不便になってきたところがいくつか挙がってきた。ショールームのスペース不足、堀江地区の再開発による人の流れの変化。ショールームとアトリエの物質的な距離。そんな最中、以前から探してはいたものの、なかなか見つからなかった物件が、まるで僕たちが力をつけるのをそこで待ってくれていたかのように現れた。

  元々建築事務所として使用されていた中之島のそのビルは、階段の踊り場に植木茂氏の陶壁が残っているなど、時代の空気や熱をしっかりとはらんだままだった。リスクのない話では決してなかったが、他に取るべき道はないと全員が確信した。ここへショールームの拡大移転を行い、直営の飲食店の経営を行う。当初より活動分野の目標としていた、「衣食住」の「食」の部分を「住」の部分であるショールームと併設することにより、僕たちの「住」が機能している環境を持つことができるのである。

  実生活においてのダイニングスペースやキッチンスペースの中で、"graf"の提案するスペースデザイン、家具、そしてその機能を実際にそれらが使用されている空間で直接的に体験してもらうことができる。同時に、今後のデザインアイデアや機能性の向上を図るためのバロメーター的役割を果たすのである。ショールームのスペースを拡大した分、家具のセレクションをさらに充実させるとともに、僕たちが共感できる他の作家の方々の作品をも取り扱うギャラリースペースも設置する。

  "graf"labo.の事務所部分と工房を同じ棟に持つことによって、デザインから製作へのプロセスをよりシームレスに行う。そして、2000年11月にgraf bld.としてオープン。1階・工房、2階・事務所、3階・ショールーム"graf"、4階レストランカフェ"socrates"、5階・ギャラリースペース"gm"という構成である。


 
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