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研修生時代
河内「役者になれとは言われてなかったんですか?」
亀鶴「言われませんでしたねえー」
河内「歌舞伎役者さんに必要なお稽古事などはされてなかったのですか?」
亀鶴「舞踊は“させられて”いました。させられていたという感じでしたねえ」
河内「国立の研修生になるということは、まったく“とんぼ”からですね」
亀鶴「そうですね。名題下さん、いわゆる大部屋さんと呼ばれる方々の育成ですから、一からですね」
河内「けっこう、厳しいんでしょう?」
亀鶴「そう言われて入ったんですけど、僕はあんまり感じなかったですね」
河内「殴られたりして指導されているのを、テレビ放映で見たことがありますが」
亀鶴「(笑)それを研修生側に訴えられたようで、そういうのは無くなりました。でも、甘いと言えば甘いですよね。この世界で一番最初に言われたのは、教えて貰っていることが間違っていると思っても“はい”と言いなさい。そこからは自分の判断かも知れませんが、それが教えて貰うということだと教えられましたけどね。僕は昔の方が、そういう点で羨ましいと思うんですね。厳しく指導して頂けて身体で覚えられる訳ですからねえ。うちの叔父なんかに聞くと、松緑の叔父さんに習いに行ったりすると、その後は便所に座れないくらい、そこまで足が痛くなるまでに教えてくれたそうですよ」
河内「厳しいくらいの方がいいと・・」
亀鶴「僕が小さい頃はまだ恐い叔父さんがいました。子供時代は鴈治郎の叔父さんのご自宅で踊りのお稽古させて頂いていたんですが、あんまり恐い先生で、渋谷のその場所に近づくと、恵比寿あたりで“行きたくない”っていう思いでお腹が痛くなってくるんですよ。本当に恐くって・・でも、今思えば有難かったなって思いますね」



河内「ダイエットの達人なんですよね。28キロ位痩せられたそうですか?それも歌舞伎のため?どうやってダイエットしたんですか?」
亀鶴「気合です(笑)。僕は目標があればできると思うんです。“とんぼ”がかえれなかったんですよ。国立の研修生を修了するまでに、これくらいはやってやろうと。始め“お前はしなくていいよ”と言われて悔しかったですからね」
河内「“とんぼ”をかえる、っていうのは大変なんですか?」
亀鶴「何ていうんでしょう。日本舞踊とかそういうことに関するものって、筋トレとかで補えないものがあると思うんですよ。“柔(じゅう)と剛(ごう)”っていうんですか。うちの叔父さん(中村富十郎)なんかは剛ではない訳ですよ。柔らかい柔(じゅう)、だから色んな踊りが踊れるんだと思うんですね。“とんぼ”もそうです。まあ、あんまり体重があると無理でしょうが、少々重くったって体さえ柔らかければかえれるんです」
河内「最初は怖いもんですか?」
亀鶴「いやあ、僕の場合は痩せたら出来るはずだと思ってましたから、怖くなかったです。でも、今思えば、そう厳しくして下さった先生に感謝してますね」

右)文化プロデューサー 河内先生
左)亀鶴さん

師匠・叔父「中村富十郎」
河内「今、役を習うのは殆ど富十郎の叔父さんですか?」
亀鶴「はい。師匠はこの人と決めた人ですからね」
河内「あの方(富十郎)の立役も、まあ、スパッー!として気分がいい」
亀鶴「そうですね。もちろんそうなんですが、うちの叔父さんは昔女形をしてられたんですね。だから、僕は最近、色々拝見していて、そう思うのですが、立役ばっかりしているよりも、女形をして、それから立役をした方が、体の使い方の色気っていうのが自然に出てくるというか、それが“いいなあ”って思うんですね。だから今は女形も勉強したいなって思いますね」
河内「叔父さん、富十郎さんは、70歳過ぎられたというのに体はよく動くし、若々しいし、科白なんかもねえ・・・凄いですね」
亀鶴「化け物ですね(笑)」
河内「また、子供さんも出来て(笑)」
亀鶴「作り方は分かりませんが(笑)・・・でも、まずね、叔父は体の張りが違いますね。肌なんかも70過ぎた人の肌じゃないですよ。30代位みたい」
河内「やっぱり叔父さんの踊りを観ていると“あー、いいなあ”と思われますか」


感心されるより感動される演者
亀鶴「そうですね。僕は歌舞伎を観ていて、叔父の踊りの時に、初めて“幕が締まらないで欲しいー”と思いました。それまでは子供だし、歌舞伎はわからないし、歌舞伎は長いじゃあないですか?“眠いなあ”とか、“早く帰りたいなあ”とか、“テレビ見たいなあ”とか思っていたんですが、“えっ、もう終わっちゃうの〜”って思いましたもの。鮮明に覚えていますね」
河内「やはり、叔父さんのような舞踊の名手になりたいですか?」
亀鶴「うーん。踊りの名手というより、僕は、歌舞伎舞踊というのは芝居だと思うんです。よく舞踊家さんと役者の踊りの違いっていうのを教わったりするんですけど、やっぱり、手の使い方が綺麗だ、身体の動きが綺麗だ、それだけでは済まされないもの、一つ一つの動きの意味、感心されるより、感動して頂けるものを目指して行きたいと思ってはいるんですよ」

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