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フェスティバルゲートで活動する4つのNPOの検証と未来に向けてのシンポジウム
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+ 新世界アーツパーク未来計画実行委員会
ダンスボックス記録と表現とメディアのための組織ビヨンドイノセンスこえとことばとこころの部屋。これらの4NPO自らが、新世界アーツパーク事業の今後の方向性を考え、より社会にオープンな場を形成するために立ち上げたグループ。


第三回シンポジウム

 

 
 

 
第一部

甲斐
 お待たせしました。第3回新世界アーツパーク未来計画のシンポジウムを始めたいと思います。今日の司会をさせていただきます、ここ(新世界アーツパーク)のNPOのひとつ「記録と表現とメディアのための組織 / remo」の代表理事の甲斐と申します。よろしくお願いします。
 今日の構成は、1部と2部になっています。あそこに書かれているように、7時半から1部、『大阪市芸術文化振興条例』を読み解きながら、ここがどうだ、ということをやろうと思っています。2部では、“新世界とアートとフェスティバルゲート”ということで、これまでやってきた、ここフェスティバルゲートの中ではなく、外に出てこの界隈に出てやってきた活動を見ていき、また、地域の方に上がっていただいて、我々がここにいて、地域に出て活動しているのを、本当のところどんな感じで受けとめていただいているのか、というコメントを聞きながら進めていきたいと思います。
 実は、開演までの間に演奏していただいたのはBRIDGEのスタッフでもある音楽家の皆さんです。バンド名って、これあるの?

西川
 あ、ないです!

甲斐
 ないのね(笑)。今日のために集まってくれた、いわば即席のバンド・ユニットなんですが、休憩のときにもまた演奏していただけると聞いています。楽しんで下さい。
 では、第1部始めたいと思います。この『芸術文化振興条例』を真ん中に置いてそれを読み解くという機会を作るにあたって、第1回、第2回で皆さんに説明させていただきました、大阪市のゆとりとみどり振興局文化集客部文化振興課、つまり僕たちと今ダイレクトにやりとりをしている部署の、どなたか役職の方に来ていただいて一度お話をしたいという風に申し入れをしました。それを受けいれていただいて、このシンポジウムのチラシの方にも出演すると書いてあったのですけれども、急遽もろもろの事情で出られない、という連絡がありました。文書でいただいているので、これをそのまま読ませていただきます。


『平成17年8月3日
新世界アーツパーク未来計画実行委員会 様
大阪市ゆとりとみどり振興局文化集客部文化振興課長 松野廣子

第3回シンポジウム「新世界とアートとフェスティバルゲート」に本市職員が出席しない理由について

 第3回シンポジウム「新世界とアートとフェスティバルゲート」に、当初は本市職員もゲストトーカーのひとりとして出席する旨、お伝えしていました。しかし一方で、最近のフェスティバルゲートの運営をめぐる大きな動きがあり、そのような状況のもと、現在本市では条例に基づく行動計画の策定作業を本シンポジウム参加の先生とも別途機会を設け進めています。
 また、実務的にはアーツパーク事業の継続を前提とする平成18年度予算要求作業を前倒しで進めているところでもあり、市の内部調整業務も今後本格化するところです。以上の理由から、今後の作業を円滑に進めていく観点から、欠席せざるを得ないと判断致しました。
 このような事情があるとはいえ、NPOをはじめ、関係者の皆さんに多大なご迷惑をおかけしたことをお詫び致します』


 という文書です。まとめると、2点ですね。まずは、条例に基づく行動計画の策定作業をおこなっている、と。文書の中で言われているシンポジウム参加の先生というのが佐々木先生でして。あ、また後ほどちゃんと紹介します。で、そのことが問題であると。問題というか、出席できない理由のひとつであると。次に、平成18年度の予算要求の作業を前倒しで進めているなかで、内部調整をする上でちょっと控えたい、という風にコメントをいただいています。本来ここに大阪市の方がいますということで僕たち広報させていただいたのですが、それがこういう理由で欠席になったということについて、どうかご理解いただければと思います。よろしくお願いします。
 では、1部のほうに入っていきます。まず、この『大阪市芸術文化振興条例』です。画面に出しましょう。これをもとにお話をすすめていきたいと思います。そこで、この条文の中にいろいろな目的であるとか基本理念であるとか様々書かれてありますが、その一部抜粋を、cocoroomの上田假奈代さんに朗読していただきたいと思います。

上田
 今日は皆さん、暑いなか来てくださってありがとうございます。読みます。


大阪市芸術文化振興条例
平成16年3月29日
条例第20号       抜粋

(基本理念)
第3条 本市における芸術文化の振興は、次に掲げる理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、推進されなければならない。
(1) 芸術文化の振興に当たっては、市民及び芸術家の自主性が十分に尊重されるべきものであること
(2) 芸術文化は、市民及び芸術家の双方が支えるべきものであること
(3) 芸術文化は、市民が芸術家の活力及び創意を尊重するとともに、自らこれに親しむことにより、その振興が図られるものであること
(4) 芸術家は、その活力及び創意を生かした自主的かつ創造的な芸術活動を行うことにより、芸術文化の振興に主体的かつ積極的な役割を果たすべきものであること
(5) 芸術文化の振興に当たっては、多種多様な芸術文化の保護及び発展が図られるべきものであること

(本市の責務)
第4条  本市は、基本理念にのっとり、市民及び芸術家との連携を図りながら、芸術文化振興施策を総合的に策定し、及び実施するものとする。

(市民が芸術文化に親しむ環境の整備)
第5条  本市は、市民が優れた芸術文化に身近に親しむとともに、高齢者、障害者、子育て層をはじめ広く市民が容易に芸術文化に親しむことができるよう、環境の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

(地域における活動の活性化)
第6条 本市は、地域において市民が積極的に芸術文化に親しむことが芸術文化の振興に資することにかんがみ、市民が地域において芸術文化に親しむことができるよう、芸術作品を鑑賞する機会の提供、公演等への支援、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

注)全文は下記サイトをごらんください。
http://www.city.osaka.jp/yutoritomidori/culture/bunnka/jorei.html


 はい、ありがとうございました(会場拍手)。
 

 
甲斐
 以上のように、一部抜粋でまことに申し訳ありませんが、このようにすごいいいことが書いてあります。これを読み解きながら僕たちの活動に当てはめながら話を進めていきたいと思います。
 すみません、遅れましたが紹介させていただきます。まず、僕の横におられる佐々木雅幸先生。大阪市立大学大学院の創造都市研究科の先生でおられると同時に、この『芸術文化振興条例』の、どう計画を進めていくかというところで、大阪芸術文化振興施策検討委員会というところのメンバーをされておりまして、それが先ほどの理由と重なってくるんですけど、そういうお立場で今日はコメントいただこうと思っています。それで、順にNPOダンスボックスの大谷さん、朗読していただいた上田假奈代さん、ビヨンドイノセンスから西川文章さん。

西川
 ビヨンドイノセンスの代表理事は内橋和久なんですが、今日は来れないので代理で僕が出ています。よろしくお願いします。

甲斐
 はい、よろしくお願いします。

会場
 すみません、質問が。

甲斐
 せっかくだからマイクちょっと。はい、いきなりですが、質問にいきます。

会場(曽和)
 質問なんですが、いま朗読していただいたなかでたびたび出てきました『市民』という言葉。これちょっとどういう意味か。ま、なんとなくわかっているような気持ちなんですが、ちょっともう少しかいつまんで説明していただかないと、それによって私たちが近づけるかどうなのか、ということに関わるのではないかと思うのですが。

甲斐
 はい。で、ですね、この『大阪市芸術文化振興条例』。いったん僕が簡単に概要だけ説明させていただきますと、これ大阪市が作ったものなんですね。だから本当はここに市の方がおられたら即答していただけるかと思います。あの、何かご返答って、どうしたらいいですか?

佐々木
 まず、ご本人がどう考えておられるかを聞いてみましょう。

甲斐
 そうですね。まず質問いただいた方から、「市民」というのがどういうふうに。

曽和
 概念的には大阪市が作られたことですから、大阪市に在住しておられる方たちが中心であろうと。そういう概念でとらまえると非常に広くてですね、地域密着性がまったく結びつきませんのでね、これがたとえば新世界でしたら新世界の住民というように読み換えられていくのか、というところがちょっとこう。私、はじめてのことですんで、何のことやらとそういうレベルなんですが。

佐々木
 私は大阪市長ではないし、文化振興課長でもないので、私の個人的見解になりますが、今おっしゃられたように、この界隈に住んでおられる方が市民である、と読み換えてもらっていいです。そういうふうに理解してください。

甲斐
 解決ですか。はい、そうですね。これ、同時に大阪市で働いている人も入るのは入るんですよね。行き来している人たち。その人たちも同時に(市民の範囲に)入ると理解していいんじゃないかと思います。では、各NPOから、活動紹介をしてもらいましょう。例えば、基本理念の3条のなかの「(1) 芸術文化の振興に当たっては、市民及び芸術家の自主性が十分に尊重されるべきものであること」という一文があります。この(1)(2)(3)の流れでもいいです。とにかく、こういうことをやってるよね、ということの確認で、活動と照らし合わせてコメントいただければと思うのですが、いかがでしょうか。

大谷
 では、私から。その3条はちょっと当たり前すぎるんであまりチェックしなかったんですが、いくつかこの条例を読み直して、条例としては非常によくできているという気がしました。実際に自分たちがやっている活動というのが、この条例に照らし合わせたとき、たとえばこの前文にある、「かかる交流を通じて先進的に多種多様な文化を受け入れ、……中略……このように大阪は古くから先進的で優れた芸術文化を創造し、……中略……現在にも受け継がれている」という文章がありますが、確かに現在でも大阪から先進的な芸術家というのが非常にたくさん生まれています。ところが、生まれてはくるんですが、同時に東京や海外に拠点を移す芸術家が非常に多いというのも現実なんですね。たとえば、ダンスボックスでいいアーティストが育ってきて、大阪を拠点として活動したいと思っても、環境があまりよくない。海外と比べると歴然としてよくないわけですけども、東京と比べても生活環境がよくないという現状があります。せっかく大阪で生まれた芸術あるいは芸術家が地方に流出していくことを非常に残念に思っている現状があります。そのために、私どものNPOであるダンスボックスでは、大阪独自のアーティストを育成して、大阪から東京を経由せずに海外にアーティストを紹介していくという事業をやっています。
 次に、これも前文なんですが、「市民が芸術文化に親しむ環境の整備並びに自主的かつ創造的な芸術活動を行う芸術家の育成及び支援に努めて」ってことですね、これはいま言ったこととも重複しますけれども、育成支援ということに、これはダンスボックスだけでなく各NPOが非常に努めています。とくに育成ということには努力しております。それが新世界アーツパーク事業として、大阪市との公設置民営というかたちで大阪市と恊働するなかで、そういう育成をやっていくことで、その効果はさらに増加していると思います。ここ数年、関西からダンスのアーティストが、非常にいいアーティストが出てきている。たとえば、トヨタ・コレオグラフィー・アワードという、新進の振付家に与えられる賞があるんですが、今年でまだ4回目で、そのうち3回で関西のアーティストが賞をとっているという現実をみても、いま本当に関西から若いアーティストが育っていて、それが全国的な評価を得ているという事例になると思います。
 それから、第4条、本市の義務、「市民及び芸術家との連携を図りながら、芸術文化振興施策を総合的に策定し、及び実施するものとする」。これは、当然連携ということです。芸術というものが市民の生活とまったくかけ離れていては、今後のアートというものは成立しにくくなってきている。そういう時代の変化があります。そのなかで、いわゆるダンスや美術という鑑賞型の、たとえば美術館に行って絵画や彫刻を鑑賞する、劇場に行ってダンスの公演を鑑賞するという、鑑賞だけが一般市民が芸術に触れる機会ではなくなってきている。たとえば、ワークショップを開催することで、参加型のアートの楽しみ方が増えてきている。そういうことも、実際僕たちはやっているなあと思いました。
 それから、第5条、市民が芸術文化に親しむ環境の整備、「高齢者、障害者、子育て層をはじめ広く市民が容易に芸術文化に親しむことができるよう」という項目がありますけれども、たとえば、地域の高齢者の方、これは本当に新世界の方にご協力をいただいてやっているんですが、現在『dB international works』というプロジェクトで、オランダのひとりの女性、Be-wonderというアーティストが一ヶ月間大阪に滞在して、80才以上の高齢者に話を聞いて作品を作っていく。これは、大阪だからこそ生まれる作品、大阪でしか生まれない作品というものを、海外のアーティストがこの地域に滞在することで作っている。いま実際に、新世界の商店街のおばあちゃんのところに、今日も撮影と録音に行ってきたんですが、今日は「更科」(注:新世界にあるそば屋さん)のおばあちゃんに話を聞きに行ったりとか。そういうかたちで地域の方と連携するということも、実際にやっています。あるいは、この地域だけということではないんですが、この地域でもやりますし、障害者のいろんな施設がありまして、たとえば堺の「ビッグ・アイ」という施設があるんですが、ここでの障害者向けのワークショップを3年連続コーディネートしたり、奈良の十津川村に「こだまの里」という更生施設があるのですが、そこの十周年祭でワークショップや障害のある方の発表のディレクションをしたり、そういうかたちで高齢者や障害者、あるいは子育て層と関係をもっている。こういう活動もやっているなと思いました。
 それから第6条、地域における活動の活性化、「芸術作品を鑑賞する機会の提供」。これは後で紹介致しますけど、ダンスボックスでは年に一回ですけど、「コンテンポラリーダンス in 新世界」ということを、劇場の中ではなく新世界の街中でやらしていただいています。これは、ふだんなかなか劇場に来れない方が、無理やりかもしれませんけど、コンテンポラリーダンスという、ひょっとするとわけのわからないかもしれないものに触れる機会を作っていく。あるいは、新世界というと、例えば全然新世界に来たことがない若い女の人なんかは「怖い」ということを言われるときがあります。僕はけっして怖くなくてすごく魅力のある街だと思っています。そういうことをひとつの企画をすることで、この地域以外の若い女性が新世界に少しずつ来るようになったかなと思っています。これは、ダンスボックスだけではなく、ココルームとも、それからremoと直接ではないんですけれど、ブレーカー・プロジェクトというかたちで街の人と関係をもってやってる。これは地域のメリットだけでなく、アーティストにも非常にメリットのある事業だと思っています。
 ちょっと長いですけども、次に第7条、芸術文化の創造のための措置、「自主的かつ創造的な芸術活動を行う芸術家及びアートマネージャー、舞台技術者その他の芸術活動に関わる者を育成し」、これも、私たちはダンスボックスというところで若いアーティストたちを育成しています。だんだんだんだん世界で活躍するアーティストが育ってきてますし、たとえばインターン制度を導入することで大学生や大学院生が一定期間アートマネージャーの勉強をダンスボックスでするっていう状況も出てきています。
 それから第8条、青少年のための措置。これは実際に地域の小学校の総合的な学習の時間を使って、他地域でやってきたのですけれども、この地域でもやっていきたいと思っています。以上のようなことを考えますと、この『芸術文化振興条例』に関して、僕ら4つのNPOは、すごいやってきたんじゃないかなって思いまして、『大阪市芸術文化振興条例』に最も合致する事業が新世界アーツパーク事業ではないか、というふうに思ったしだいです、はい。

甲斐
 あの、じつは、ここに大阪市の人がいて、このやりとりをして、大阪市さんすごいなぁ、って言いたかったんですね。他都市からもすごい視察に来ていただいていて、それは「こういったかたちで結果を残しているアート・文化事業というのはなかなかすごい」ということで全国から来られるんです。そういったことも含めてすごいな、というのを確認したかった、というのが場の趣旨でした。で、何か、先生、いまの流れで唐突かも知れませんが、芸術文化振興施策検討委員会というもののなかで、いまこの条例を元にどうしていこうか、みたいなことを会議されている中で、ここ(新世界アーツパーク)は、どういう感触をお持ちなんでしょう?

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