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 初夏のある日に、大阪の万博公園にある国立民族学博物館(みんぱく)の特別展示場を訪れた。いつもなら物静かな会場が、この日はなにやらザワザワとうごめいている。あるところには、行列まで出来ている。その最前列にあるのは……なんと冷蔵庫!

 特別変わった物ではない。うちの家にもあるような白い、四角い冷蔵庫だ。それを開けて見るために、行列が出来ている。どうして? 何かスゴイ物が入っているの? 謎を解明するために私も並んでみた。いよいよ私の番。扉を開けて見えたのは……卵、牛乳、何かの食べ物が入った透明のプラスチック容器などなど。なんだ〜うちにあるのとおんなじやん。でも、なぜだか少しウキウキする。金属製の容器を手にとってあけてみる。うわっキムチだ。匂うぞ。ウキウキ度がどんどん高まっていく。

 隣の寝室でタンスの引き出しを開ける。あ、パンツだ。ブラジャーだ。ネクタイもあるし、背広もある。子供部屋の二段ベットにはピカチュウのぬいぐるみ。その壁にはおばあさんの写真。細工がほどこされたタンスを開けたら、布団の晴れやかな色彩が目に飛び込んできた。リビングには家族写真が飾られ、風呂場では洗濯物が干されている。いろんな物を見て、触って、匂って、隣の部屋へ……ああ、止まらなくなってきた。

 実はコレ、みんぱくで3月21日から7月16日まで開催されていた『2002年ソウルスタイル 李さん一家の素顔の暮らし』展での出来事。この展覧会では、ソウルの高層アパートに実際に住んでいる李さん一家(夫婦と子供2人とおばあさん)の家財道具すべてを収集し、現地そのままに展示したのだ。家の周囲には、2人の子供が通う小学校、オモニ(お母さん)がよく行く市場、アボジ(お父さん)の仕事場、ハルモニ(おばあさん)が懐かしむ故郷の墓なども一部再現されている。2階には、生まれてから死ぬまでの韓国の人達の人生の17のトピックがぐるりと並んでいる。

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