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左 清水氏 右 景山氏
景山理 清水さんは、アートの世界でいろんなお仕事をなさってきたと思うんですが、ひとくちにアートといっても、具体的にはどんなことをしてこられたのでしょうか?

清水敏男 もちろん絵とか彫刻とかいろんなのを展覧会でやってるんですが、最近多いのは、やはり映像作品の展覧会ですね。ここ7〜8年ですか。特に日本はいいアーティストがたくさんいますが、もちろんアメリカ、ヨーロッパだけではなくて中国や東南アジアからもどんどん若いいい映像作家が出てきています。そういう人たちを紹介する展覧会を開いています。

景山 アーティストが自立するってことでは、絵とか彫刻とかは作品を売ってなんぼということになるんだろうと思うんですが、映像の場合だとビデオとかの形にして、それを商品にしていくことになりますか?

清水 映像の場合、正直言って、どうやって売ったらいいか分からないという状況がまだあるんですね。そんな中で、DVDを限定で作って売るというアーティストとか、上映ごとにお金を徴収する人とかがいますが、まだあまりうまくいっていないですね。

景山 大阪には「芸術創造館」というのがありまして、そこではアーティストを自立させるために行政がサポートして、音楽とか芝居とかを商品化していくプロジェクトがあるんですね。育成、そして自立するまでの道は大変だと思いますが、展覧会などいろんなことで新しい作家を世に紹介することも大切ですね。

清水 作品が先行してそれがうまく成熟してくると、マーケットがつくられるんじゃないですかね。いままでの例をみても、マーケットがないと一生懸命熟成して売ろうとしても売れないわけですよ。作品が良ければマーケットが出来てくるという感じじゃないかな。

景山 大阪でもギャラリーなどでいろいろなことをされているわけですが、清水さんから見られて大阪のアートシーンはどうですか?

清水 正直に言って、もうひとつ響いてこないなという感じなんですが。私がまだ大阪をよく知らないからかもしれないですが、もう少し活気が出てこないだろうかという感じですね。

景山 なぜでしょうね?

清水 お客さんが多いのは京都とか神戸からで、大阪のほうはなんとなく少ないような気がするんですけど、ほかに面白いことがたくさんあるのかも知れないですけど(笑)。

景山 そうなんですか。その京都とか神戸のお客さんは、若い人が多いんですか、それとも年輩の方ですか?

清水 いろいろですが、まあ一緒ですかね。

景山 今、映画の側からいうと、全体的に若い人が来ないという状況があります。もはや、若い人を考えても仕方がないんじゃないかって思うほどです。

清水 それは、大阪だけじゃなくてですか?

景山 全体的にです。先日も東京の「ユーロスペース」の代表の堀越さんと話したんですが、ユーロスペースはミニシアターの中でもとんがっている作品を上映しているところなんですね。だから、観客も若い人が多いと思ったら、実は今は平均で50歳くらいらしいんですよ。もちろん岩波ホールはシニアだと。ミニシアターでも若い人が来なくて、年齢層が上がっていくという、どうしようもない若者の映画離れがあるんですね。現代アートでこんなことになったら、どうしようもないと思うんですが。

清水 たとえばブロックバスターな映画ですよね、ちょっと前のシュワルツェネッガーだとか、そういう映画は若い人はいっぱい行くんじゃないですか?

景山 それは行きますよね。大量宣伝とか、ブームには敏感ですから。でも、そもそも若い人が情報に飢えていないというのが問題なんです。今までずっと与えられっぱなしの世代でしょ。かつては情報誌なんかもなかったし、自分で見つけていかないと出会えなかったですね。昔の映画なんか上映されなかったですから。だから、僕なんか見たいと思って自主上映を始めたんですけど。今では、ビデオなどで手軽に見られるでしょ。自分からの発見ということが少ないですよね。これは重要な問題だと思うんですけど。
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