いよいよ、です。  
 今月末には「キノコ+graf meet&greet」と付された、珍しいキノコ舞踊団の大阪初公演『こんにちは。』が上演されます。  

  思えば前回からの1カ月、ほとんど立て続けといっていいほど、いろんなことが起こったのでした。今までの、わりとノンビリとした気分もふっとぶほどで、我々企画制作サイドはちょっとあわて気味です。
 まず、前回原稿を書いた直後、1月27日の月曜日に、キノコ伊藤さん、graf豊嶋さん、パブロフ大桶さんと長谷川さん、そして中川、福永の合計6人が一堂に会しました。6人そろうのは初めてです。
 場所は東京駅の丸ビルの5階、精養軒茶房というところ。もう夕方の5時をすぎていて、雨も降っていました。
 もっぱら最終的な確認事項、キノコとgrafが今回、タッグを組むことが確認され、伊藤さん、豊嶋さんの両者によってがっちり握手がかわされました。
 なんだか記者会見みたいですけれど、ちょうど、二人は隣どうしに座っていて、その隣には大桶さんがいますし、本当に制作発表の記者会見みたいではありました(すごい至近距離ですが)。
 とはいえ、あとは中川さんから予算面等、具体的な話になり、それからやはりアーティストが二人も並んでいるのだから当然、舞台の案の出し合いになり、豊嶋さんが最終の新幹線で大阪に戻るぎりぎりまで、熱心に話し合いは続きました。

 その1週間後、今度は伊藤さん、大桶さんが大阪のgrafを訪れました。伊藤さんは2度め(第4回参照)、大桶さんは今回初めてです。
 grafが自ら運営するギャラリースペース、gmが5階から隣のビルの1階に移転するので、その場所を実際に見に来たのです。
 いや、見に来た、といった漠然としたものではほんとはなくて、豊嶋さんと伊藤さんはさっそく、会場をどう使うかの検討に入ってました。大桶さんと中川さんも2人の話を聞きながら、客席が計算どおりにセッティングできるかどうかの打ち合わせをしていて、照明担当の2人も会場の様子をチェックしています。
 まだ改装前ですし、会議室だった雰囲気もすこし、残っています。それぞれ自分たちの仕事に熱中しているあいだ、ぼくは後ろの壁にもたれかかっていました。サボッていたわけでありません。感動していたのです。「ああ、来月には、ここで、宇宙一すばらしい公演が行われるのだなあ」と思うと、胸がいっぱいになってしまったのです。

 その数日前に、伊藤さんより今回のタイトルが伝えられ(伊藤さんから中川さん経由で。連絡系統はすでに中川さんに一本化しています)、すべての情報がこれでそろったことになるので、チラシの製作にかかりました。
『こんにちは。』というタイトルを電話口から聞いたとき、ふだん使う言葉をそこだけ切り取っただけだし、新しい言葉をとりわけ発明したわけではないのに、不思議なことにいろんなイメージが浮かび出して、すぐに手もとの紙に書き出してみて、すべてがひらがななのって、キノコの作品にはこれまでなかったはず、なんだかいいぞと思えた数瞬後、「このイラストレーターしかいない」とある確信があって、もう受話器を下ろしたその手で、その人たちに連絡をとっていました。
 チラシを含む紙関係(チケットとか当日のパンフとか)のデザインは2人の女の子に依頼し、とりあえず仮チラシを(3日で)作ってもらって、大量にコピーし、さっそく演劇の挟み込みに使用しました。 〈挟み込み〉は孤独な作業です。
 お芝居を見に行ったとき、受付の人から、チラシの束を受け取ったことがあると思います。当の公演のアンケートなどと一緒に、ほかの劇団のチラシが束になっているあれですが、あのチラシの束を作る作業を〈挟み込み〉というのです。
 ある舞台公演が行われる場合、おもにその前日に、公演をひかえている劇団がチラシを持参して集まり、共同してチラシの束をこしらえていくといった作業なのですが、流れるプールというのを小学生の頃に授業時間の終わりの方でやったことがありますが、あれに似た雰囲気があります。
 ものを書く作業も、ひとりきり、という意味では孤独なのですが、〈挟み込み〉にはそれとは異なる、言い知れぬ、孤独感、があります。
 孤独ですが、嫌いではありません。むしろ、好きかもしれません。あいかわらず手際は悪く、神業のように素早くチラシの束をこしらえて後ろから迫ってくる人におびえるのも、もしかしたら、嫌いというより好きなのかもしれません。
 しかし、〈挟み込み〉はあくまでかっちりとしてシステムとして存在し、終わってしまえば、ちりぢりとなり、その劇場の担当の人が次回の挟み込み情報を言うのをうつろな耳で聞くだけで、あとは帰るのみ、です。

 そういったこともあって、今回の「キノコ+graf meet&greet」のスタッフをしてもらえる人たちに声をかける際、できるだけチームのようにしたい、と考えてきました。
 作業の大小にかかわらず、チームワークを発揮できたらきっと、すてきですし、『こんにちは。』というタイトルの元に集まるのにもふさわしいと思えたのです。
 それで、実際、声をかけてみますと、「いいよ」とみんな、言ってくれるので、あっという間に十数人が集まりました。今月末の公演はこの十数人であたります。
 ところで、チームなのですから、名前が必要です。
 先月から考えていたのですが、けっきょくあまりひねらず、〈大阪珍しいキノコ舞踊団公演連絡会〉とすることにしました。
 昔、「大阪3D協会」というのがあって、たしか藤本由紀夫さんらがかかわっていたと思うのですが、この名前が好きだったので、参照させていただいたというのもあります。「大阪」というのをどこかにつけたかったのです(ぼくは京都に住んでいるのですが)。

 それにしても、紙って重いですね。伊丹のAI HALLとか旭区にある芸術創造館とかに、コピーしたばかりの仮チラシを2500枚ほど運んだのでくたくたになりました。肩が抜けるかと思いました。しかも、力を込め、両腕を引き上げるたびに、手提げ紙バッグに印刷された〈Let's invite the29th Olympic Games in 2008 to Osaka!〉の文字が視界の隅にチラチラし、気になってしかたがありません。
「いや、必ず実現させてみせるぞ」
 僕はそうつぶやくと、季節外れの汗をふきました。そして、ふたたび歩き始めたのでした。

 などと、このようにしゃべってくると、まるで自分がすごく仕事をしているみたいに思えてきますが、そんなことはありません(自慢することでもないですが)。いうまでもなく、実際の舞台をこしらえるのはキノコとgrafですし、我々サイドでいろんなめんどくさい連絡事項や依頼、確認、チケット発売関連、裏方のあれこれなんかを総合的にやっているのは制作の中川さんです。またすでに、大ギノコもあちこちで、活動をしています。ぼくがやっていることといえば、まさにこうやって書くことと、ここに書いたことのみといってよく、もちろん、実際はここに書かれぬことの方が多いのですから、その作業については、なるべく文字にしたいとは思いつつも、行間に消えていってつかむことができません。

 今回の公演は、キノコとgrafの「出会い」(=meet&greet)だけではなく、会場に集まったみんなの、我々とみんなとの、ひいては読者どうしの「出会い」の場所、になると思うのです。
 それはこのいっときだけでもいいですし、もし、この公演を見て、このような企画を自分もやってみたいと思ったら、この場でその仲間を探してみるのもいいでしょう。あるいは、大ギノコに加わってもいいです。いっしょに後片付けをしましょう。いや、それは単なる後片付けではないかもしれません。『こんにちは。』とあるのだから、「出会い編」なのだから、その後に引き続く、それは準備かもしれません。

 ところでこの連載、今回で終わりです。
 全10回だと思ってたんですが、計算をまちがっていました。トホホ。

【追記】その1
 以下の4日間だけの日記は、公演中に販売した「こんにちは。」小冊子の巻末フロクとして収録したもの。基本的には僕が書いて、制作の中川さんに加筆してもらった。
 この小冊子は全部で100部くらい作って(正確な数は覚えてない)、受付のところで定価250円で売ったのだけど、完売した。うれしい。内容は、「全地球人に告ぐ」9.5バージョン、直筆イラストと文字で綴る「私が家具を作るなら(珍しいキノコ舞踊団の場合)」、「僕が振付するのなら(grafの場合)」、キノコとgrafの対比略年表、そして、オマケ、である。全6頁。
 ホントにこれは手作りで、僕も含めスタッフで、コピーして、折って、貼って作った。しかも、下の日付を見てもらえばわかるけれど、公演前日の内容を含むので、作業は公演当日(27日)の朝までかかった。とりあえず、できたぶんずつ(20部とか、30部とか)、並べていったのだった。収益は当然、公演費用の足しになった……。

2003/5/20/記

3月23日(日)
 伊藤さん、長谷川純子さん大阪到着。さっそく旭区民センターへ。ワークショップに臨む。伊藤さんはおととい、滋賀県のさきらという劇場でソロ公演をしてきたばかり(『ウィズユー2.1』)。1日だけ東京に戻り、ふたたび、大阪へ来た、ということになる。けれど、疲れなどまったく感じさせない、元気一杯のワークショップだった。もちろん、14人の参加者の皆さんも元気一杯。
 夜の7時にその3時間のワークショップも無事に終わる。伊藤さん、長谷川さんはそのあと、graf bld.に。
 宿泊場所へは11時すぎ、ということになったが、この宿泊場所というのはホテル、とかじゃなくて、大ギノコスタッフの人のおうち。たまたま、その人が今、香川に住んでいて、空いていたのである。

24日(月)
 午前から舞台セットや客席、音響機材の搬入作業始まる。大阪だけでなく、京都からも多くのスタッフがかけつける。
 午後1時すぎにはキノコのダンサー5名が新大阪に到着。スタッフ2名、迎えに行く。ダンサーはさっそくgmに向かい、場当たりののち、夜8時より通し稽古。ほとんどの振りは東京でつくられている。
 その後、伊藤さんと豊嶋さん、照明の位置などを再検討、明日以降の変更部分を仕上げる。
 10時すぎ、graf全メンバーとキノコと大ギノコで、graf bld.4階ソクラテスにて顔合わせのパーティーがある。みんなが顔を合わせるのはこれが最初。

25日(火)
 昨日の通し稽古をふまえ、手直しの作業が続く。
 音作りや明かり作りに多くの時間が費やされる。graf豊嶋さんもつきっきり。つきっきりかと思うとgrafbld.へ移動。かと思うとまたgmに戻っている。忙しい…
 今回は舞台用の照明機材だけでなく、graf作のインテリアの照明機材も併用するため、照明のオペレーションが通常より難しい(両者の扱い方は全く異なるので)。けれど、そのちがいがあるがゆえ、gmという空間に変化がつき、言いがたい、触覚的な印象を、見ている者に与える(ような気がする)。
 夜遅く、12時前まで、作業は続いていた。

26日(水)
 朝10時より、キノコはビデオ映像のための撮影をする。
 客席の残りの搬入作業など、追い込みである。
 夜8時、1時間遅れでゲネプロ開始。
 その後、あいだをおかず、各場面のチェック。音を中心に、タイミングなどをていねいに確認していく。印象的だったのは舞台の中央で、あるいは場所を数歩、移動しながら、伊藤さんひとり、スピーカーからの音に耳をすましていたところ。かすかな音のみだれも逃さない。
 やはり10時すぎまでの作業となる。朝の10時から夜の10時までという作業が可能なのも、「環境」がまさにgrafだからだろう。とにかくここは、人の動きがなくならない場所だとつくづく思った。
 いよいよ、明日が本番だ。

 

【追記】その2

 ところで、公演前日に挟み込みをした。
 ひと月からふた月前、てわけして、大阪・神戸・京都のあちこちのダンスや芝居の公演に『こんにちは。』チラシを挟み込んでいったのだが、公演当日を迎えるにあたって、いよいよ、われわれが挟み込みを主催する立場になったのである。
 当然、挟み込みというくらいなので(関東では「折り込み」というらしいのだが)何かに〈挟み込む〉わけだ。何かとは、これである。

 A3のコピー用紙で、二つ折にしてある。ちかぢか公演をするよ、という人たちのチラシなどがここに挟み込まれていくというわけである。

 さて、「挟み込み」方にはおよそ三つの方法がある。
 私も経験したが、ひとつは主催側にもしもし福永ですがと電話をかけ、指定された時間に・指定された枚数を・指定された場所へ持参し、自らチラシを挟み込む方法である。おのおの持ち寄ったチラシを長机などに1列もしくは2列に並べ、皆でぐるぐると回転しながらチラシの束をこしらえ、上に示したような二つ折の紙に(ビニール袋に入れる場合もある)挟み込む。挟み込みと呼ばれるゆえんである。

 他方、バーター契約を結ぶ、という手法もある。
 主催側にもしもし福永ですがと電話をかけるところまでは同じだ。
しかし、その後がまるでちがう。回転するのではなく、指定された枚数のチラシを宅配便などで送ってしまうのだ。すると、自動的に、その主催者の公演に挟み込まれる。ただし、ブーメランのように主催者側からも宅配便が福永の手もとに届く。
 あんたのところの公演にこれを挟め、というわけである。だれが挟むのかというと、もちろん「挟み込み」に来てくれた人たち+主催側の人間であって、いうまでもなく、実際に来てくれた人には負担になるシステムである。バーターが多くなれば、回転効率も落ちる。
微妙な関係性がそこにはあるなあと思った次第だ。

 三つめとは、後ばさみ、といわれるものである。
 われわれが主催した「こんにちは。」挟み込みは、公演前日の3月26日午後2時より開始された。メク〜ルすら用意できぬあわただしさの中、来てくださった人たちはもくもくと手際よくチラシの束をこしらえてくれ、600部はあっという間にできた。できた束はさらにいくつかの段ボールに分けられた。

 あとばさみ、はこの段ボールに収納された状態からひと束ずつ取り出し、チラシを追加することである。600とはいえ、膨大な作業であるといわざるを得ない。しかし、私は案外この作業が好きだ。
むろん追い立てられることがなく、動くことも少ないからである。孤独でなかなかいいものなのだが、あとばさみはやらしてくれないところもある。私は何を書いているのだろうか。「挟み込み」がよっぽど気に入ったのか。

 とまれ、「挟み込み」されたものは、綴じられることはない。すぐバラバラになる。おそらく、当日配布されたまま、保存されていることもないだろう。つまりこれもまたmeet&greetでないとだれにいえよう。そこで、ここに記録しておくことにする。

(挟まれたもの)

 (1)「こんにちは。」チラシ
 (2)「こんにちは。」アンケート
 (3) 速報びわ湖ホール夏のフェスティバル2003
 (4) 初心者歓迎!ENBU[演劇&映像]ゼミナールダンスコース5月生募集中!
 (5) SEIGENSHA YAYOIKUSAMA Furniture by graf
 (6) information graf media gm
 (7) 湊川新開地古今遊覧 新開地アートブックプロジェクト
 (8) コンドルズ2003年夏大阪公演決定!!
 (9) SaburoTeshigawara Luminous
 (10) 世界初演!エレファント・バニッシュ
 (11) SAKIRA DANCE MISSION
 (12) ART COMPLEX 1928 PRESENTS 牡丹燈篭
 (13) いいむろなおきマイムソロ公演 マイムノススメ
 (14)「リビングルーム/さきら編」出演者募集!!
 (15) 透明人間 山下残ダンス公演
 (16) 京都の暑い夏2003 第8回京都国際ダンスワークショップフェスティバル
 (17) 創作・ソウサク・奏作・捜索 する ダンスdb DanceBOX vol.91-95
 (18) 北村成美のダンスマラソン
 (19) 門 gate
 (20) IMI大学院スクール
 (21) インターメディウム研究所・IMI大学院スクール
 (22)flows flat link of wakayama
 (23) ヨーロッパ企画第12回公演 囲むフォーメーション


(挟んだもの)

【左ページ】
珍しいキノコ舞踊団 大阪初公演
「こんにちは。」
キノコ+graf−meet&greet−

〔演出・振付・構成〕
伊藤千枝
〔環境〕
graf
〔出演〕
山下三味子
井出雅子
山田郷美
佐藤昌代
飯田佳代子
伊藤千枝
〔舞台監督〕
長谷川純子
〔照明〕
田上章子(STAGE LIGHTING DESIGN LUNA)
長村香月也(STAGE LIGHTING DESIGN LUNA)
〔音響〕
北島淳
高橋岳信
〔衣装〕
NEW WORLD SERVICE
〔イラスト〕
100%ORANGE
〔宣伝美術〕
神野優子
ヤマサキジュンコ
〔主催〕
log-osaka web magazine
〔企画〕
福永信
〔制作〕
中川みとの
〔制作協力〕
パブロフ(大桶真・長谷川純子)
〔スタッフ〕
大阪珍しいキノコ舞踊団公演連絡会

【右ページ】

はじめに

本日は珍しいキノコ舞踊団大阪初公演「こんにちは。」〜キノコ+graf meet&greet〜にお越しくださいまして、ありがとうございます。
偶然のようなきっかけから、この公演の準備は始まりました。
キノコをのぞいて、スタッフのほとんど全員、ダンスにかかわるのは初めてで(grafだって、100%ORANGEだってダンスは初めてです)、みようみまねで今日のこの日に、たどりつきました。
チケットの予約の際とか、受付とか「ふつうっぽくないな」と思われたかもしれません。不手際もあったかもしれませんが、逆に、「ふつうの舞台よりみぢかに感じたよ」と思ってくださったら、とてもうれしいです。
なぜって、珍しいキノコ舞踊団は作品のなかでこれまで、劇場においてのみぢかさと緊張感の〈あいだ〉を行ったり来たりしてきたのですし、grafだって日常とアートの往復運動をコンセプトにしてきたからです。
この2組のグループによる舞台作品をお手伝いする私たちスタッフも、みぢかさをうまく表現したいと思っています。

サブタイトルのmeet&greetには「出会い編」という意味が込められています。それはキノコとgrafの「出会い」だけではなく、会場にいる全員、見る側と見られる側、それぞれの「出会い」でもあります。
「トイレはどこですか」とか「あっちですよ」とか、それくらいの言葉しか、かわせないかもしれないですが、でも、もうここを読んでくださっているそのことがすでに、かけがえのない出会いの始まり、なのかもしれませんね。
もうしばらくしたら開演です。
ゆっくりとたのしんでください。

大阪珍しいキノコ舞踊団公演連絡会一同

 

大阪珍しいキノコ舞踊団公演連絡会

福永信
中川みとの
ますいめぐみ
平野愛
むしちゃん(花嵐)
小川薫
中里佳世
神野優子
池田孔介
松田暢子
上田誠
石田剛太
酒井善史
永野宗典
諏訪雅
本多力
瀬戸中基良
伊藤紘介
藤井まや
川口了子
西原尚美
晴木皮叔子
阿部理砂
森久子
吉村昌子
東木由紀
ヤマサキジュンコ
吉田大助
古川千晶
本多信男
田戸麻耶

協力

近藤良平(コンドルズ)
鶴田真由
Theatre PRODUCTS
橋本裕介(劇団衛星)
土井朋(劇団カノン)
岩渕貞哉
森瑞穂
伊藤健
村上浩一
山崎大輔
青木美奈
神野幹夫
神野喜代子
中川ふみ
岡本家
吉田和睦(元OMS)
山根朝子
チャック・O・ディーン(劇団衛星)

【裏表紙】

*上演時間は約50分です。
*再入場の際は、受付にチケットの半券をお見せ下さい。
*許可のない写真撮影はご遠慮下さい。
*上演中、携帯電話等は音の出ない状態にして下さい。
*開場してから開演まで、1時間あります。隣のgraf bld.にはショールーム(3階)、レストラン(4階)もありますので、ちょっと覗いてみて下さい。また会場内のバーでも食べ物(きのこパイ・きのこピザ等)をご用意しています。


(追記・注)今回、この紙(挟んだもの)を読み直してみて、若干の誤植があったので、訂正した。また、作成後にも多くの方の協力を得たので、お名前を追加させてもらった。なお、チラシ(挟まれたもの)は活字の大きいもの、あるいはパッと目についたものだけを拾って記した。残部のないチラシについては、記録がないため、割愛せざるを得なかった。

2003/6/21記



【追記】その3

 以下に転載するのは、『演劇ぶっく』[2003年6月号]に掲載された『こんにちは。』公演終了後の記事である。執筆者の吉田大助氏は本連載「全地球人に告ぐ」1の追記その1にすでに登場している。『こんにちは。』が成立するに至った、最初のキッカケに、彼の存在があることをここでも明記しておきたい。その彼によって(ひとまずの)しめくくりの文が書かれたことは幸運な偶然だと思う。
『こんにちは。』終了後の記事は、このほか、『minibook Hana』[vol.4]に掲載されている。こちらも参照されたい。

2003/11/22記


ダンスと家具のタッグマッチ!

吉田大助


 美術館の中庭、カフェ、倉庫——。
 普通の劇場とはちょっと異なる空間を舞台にダンスを踊ってきた、珍しいキノコ舞踊団。今回の舞台は、大阪のど真ん中にあるギャラリースペースgm。隣に建つgrafのビルから移転したこのスペースのこけら落としとなる今回が、意外や意外、キノコにとって大阪初公演となった。
 『こんにちは。』は、大阪市のウェブマガジン『log』に執筆する「ディレクター」、小説家の福永信の提案で始まった。「一度も大阪公演をしていないキノコを、大阪に呼びたい!」と願う福永が、キノコの振付家・伊藤千枝に声をかけたのだ。その後、伊藤の「大阪といえば、graf?」という一言をきっかけに、grafの豊嶋秀樹と初めて会うことになり……。そうして、キノコはダンスを、grafは家具や舞台空間(チラシには「環境」とクレジットされていた)を手渡し合う、夢のタッグマッチが実現した。
 今回の公演にあたってキノコのメンバーは初日の4日前から順次会場入りし、大阪のスタッフとミーティングを重ねながら、最終的な公演プランを現地で練り上げた。「今回はすごくスペシャルな公演だった」とキノコの振付家、伊藤千枝は言う。
「家具は全部、キノコスペシャルなんです。会場に入ってから、ベッドを動かせるようにキャスターを付けてもらったり、天井にドリルで穴を開けてもらったり。要望を伝えると、隣のビルで仕事している職人さんが家具や空間を改造してくれるから、やりたいことがすぐできて、すごく楽しかったです。作品を見た人から、ダンスがアダルトだったねとよく言われたんですけど、最初からそうするつもりじゃなくて、空間と美術に影響されて自然とそうなったんだと思います。もういい歳ですしね。家具のシックな色は、普段のキノコにはあまりない色だから」
 舞台には今回のプロジェクトに参加する色々な人のアイデアが盛り込まれた。例えば照明のプランは豊嶋が提案し、伊藤が演出したもの。
「私はアイデアを構成する係なんです。最近は、みんなの脳みそを借りたいと思って。だから今回も、ダンサーから振りをもらったり、豊嶋さんから照明のプランをもらったりしました」
 もう一方の主役である豊嶋は、会場設営だけでなく、舞台や映像の中で踊りまくって大活躍。終演後に声をかけると、「家具は舞台に上がることで“キャラクター”になる。それをショールームに展示したら、公演を見に来たお客さんは他の家具とは全然違った目で見られるんじゃないか。それって面白い!」と嬉しそうに語っていた。
 実は『こんにちは。』のサブタイトル「meet&greet」は、今回が「出会い編」になるという意味が込められているのだそう。次は「成就編」(?)を、東京で実現したいと伊藤は言う。
「今回の作品はgrafの“家(おうち)”にキノコが遊びに来て、部屋をグチャグチャにするというコンセプトでした。窓から入ってきたりして、不法侵入なんですけど(笑)。今度はキノコの“家”にgrafのみんなを呼んで遊んでもらいたいです。私たちがおもてなしする機会を作りたい」
 この強力なタッグが創り出す新作が待ち遠しい!

[演劇ぶっく(2003年6月号/vol.103)より転載]

 

追記【その4】

 上の追記【その2】の<挟まれたもの>の中にある、「こんにちは。」アンケートにはじつに、たくさんの方にご協力いただいた。
 アンケートの質問項目は全部で7つで、次のようなものだった。

(1)この公演をどこでお知りになりましたか。
(2)log-osaka web magazineをご存知ですか?
(3)珍しいキノコ舞踊団の作品をご覧になったことがありますか?
(4)grafの作品をご覧になったことがありますか。
(5)開演までのあいだで、お気づきになった点(例えば、チラシの感想、会場の雰囲気など)がございましたら、お知らせ下さい。
(6)作品をご覧になってのご感想、メッセージをお寄せ下さい(キノコのみなさん、grafのみなさんにおわたしします)。
(7)サブタイトルに「meet&greet」とありますように、今回の公演には<出会い編>という意味が込められています。<出会い編>の次《成就編?》を希望されますか?

 これらの質問を考えたのは、たぶん公演初日の前々日、3月25日だったと思う。当時のノートを見ると、アンケートのコピーは前日の26日にしたと書いてある。同じ日(26日)にはスタッフで手わけして、ざぶとんを運び込んで会場の最終的な設営をしたり(ちなみに観客席として使った横長の椅子は24日に運び込んでいる)、挟み込みをしたり、まかないのごはんを作ったり運んだりなどの作業をした。また夜にはゲネプロがあった。ノートには赤で「この日は人手が必要」と書いてある。

 アンケートの質問項目は、芝居を見たときに配られたものを、たまたまとっていたのがあったのでそれらを参考にした。
 手もとに残っているということは、そのアンケートに僕は答えなかったわけだが、アンケートというのは、終わってすぐに書かなくちゃいけないし、とてもむずかしい。
 にもかかわらず、「こんにちは。」アンケートは、イラストを描いてくれたり、(6)の感想・メッセージのところでとくに、たくさん、気持ちのままに心のこもった言葉を書き付けてくれていて、今、この追記を書いている横にアンケートの束があるのだけれど、繰り返し読んでしまう。

 回収したアンケートは、その日ごとにキノコの皆さんに見てもらっていたが、公演終了後、全部コピーして、キノコの皆さん、グラフの皆さんに渡した。また、主催のlog-osaka web magazineの編集室にもコピーが保存してある。とくに(5)、または(6)のところで、100%ORANGEのイラストについての感想を書いてくださった方のアンケートは、これもコピーして、100%ORANGEの二人に渡した。僕らスタッフはそれぞれ、回し読みした。原本は僕が預かっている。

具体的な感想はここでは紹介しない。プライベートな内容を含むし、もちろんアンケートに書かれたことがすべてではないと思うからだ。アンケートに答えてくださった方が多かったのと同じくらい、アンケートを書かなかった方も多くいる。僕がこの公演の観客だったら、たぶん書かないだろう。いや、書けないだろう。書きたいと思っても、言葉がすぐにでてこないと思う。文字になる感想と、文字にならない感想の総体が『こんにちは。』という作品の体験そのものだとも思う。

 ところで、統計として興味深かったことがあったので、それを最後にひとつ。
 (7)の「<出会い編>の次《成就編?》を希望されますか?」は、ほとんど100パーセント、「する」という回答だった。よかった。
 (2)の「log-osaka web magazineをご存知ですか?」という問いについては、これまたほとんど100パーセントだが、「知らない」だった。むろん、これをきっかけに「知った」ということである。よかった。

2004/2/23記

福永信