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小説を読みながら自転車を運転したりすると危ない。また小説を読みつつ畑を耕すことはできない。読書とビルディングの建設を同時に遂行するとかなり危険に違いない。電話をしながら読んでいたりしたらきっとどちらかが頭に入っていない。小説を読むには現実生活からいったん離れるしかない。自転車から降りて、畦道に座って、休憩時間に、一人で読むしかあるまい。それはどこか夢を見ることに似ているかもしれない。だが眠りながら読むことはできない。すると小説の場所は、現実、から遠く離れたところに位置しているということになるのかもしれない。現実を置き去りにしているからこそ小説はおもしろい。といわれたら否定するのは難しい。それがいいことなのかどうかはわからない。ここに書き継がれる文は、小説ではないが、小説というより演説みたいなものだが、現実、を言葉は、文字は、突き刺すことは可能かどうかを探求するために書かれるといっていい。

1972年東京都生まれ。1996年京都造形芸術大学芸術学部中退。
【著書】 『アクロバット前夜』(リトル・モア/2001年)
『あっぷあっぷ』(村瀬恭子との共著/講談社/2004年)