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大阪松竹座七月四代目尾上松緑襲名披露、関西・歌舞伎を愛する会第11回の大歌舞伎公演の楽屋。歌舞伎十八番の内「矢の根」で曽我五郎を勤められる片岡我當さんにその化粧衣装をつけられるまでを拝見させて頂きました。

我當さんは若い頃、今回四代目を襲名される松緑さんのお爺様、二世松緑さんのもとで十年間修行をされました。本来は初春狂言であるお目出度い演目で、お世話になったお孫さん(四代目松緑さん)へはなむけをしたいという我當さんは、今も毎日ご先祖とご一緒に二代目の供養もされているという礼を大切にされる誠実な方です。

これから隈取を入れられる我當さん
「これは難しそうにみえるでしょう。でも、これより簡単そうに見える“むきみ”の方が難しいんですよ。この五郎は豪快さ、様式美、元気さが心情ですからね。同じ五郎でも色気を出さなければならないものもあります。」

我當さんのお使いになる紅は特別なものだとか
「ええ、特別ですよ。中国から取り寄せられたもので、京都に一軒だけ扱っているお店があるんです。私はもう、200年分を買っています」
ご子孫の為に?
「あと100年分、今度、調達しようと思っていますよ(笑)。この紅が何で出来ているかわかりますか?」
さあ・・・??
「昆虫から出来ているのですよ」
へえー。(ビックリ!!)


そんな風に私たちに優しく対応して下さりながら、お弟子さんが差し出す紅をサッサッサッサと手馴れた様子で、お顔を仕上げていく我當さんですが、気持ちのいい緊張した空気はずーっと続きます。
 
     
お化粧を終え、いよいよ衣装です。その大らかさ豪快さを表現するために、大きな衣装の下にも綿を着込んで体を大きくつくります。涼しい顔をされていますが、見ているだけで暑そう、重そう、大変そう・・・。
舞台を見ているだけでは気づかなかった部分にも、よく見ると細かく刺繍が施されていて、いちいち「へえー」やら「ほー」やらいいながら感心して見入りました。本当に豪華で綺麗な衣装。
そして立派な五郎です。
 
     
驚くのは、衣装や鬘つけるために次から次から色んな人が入ってきては、入れ替わりながら、仕事をこなしていくことです。短い会話が二言三言交わされたりしながら、沢山の工程にも関わらず、あっという間に衣装が着けられました。

衣装は40キロも重さがあるそうで、朝の食事は取られないとか・・・
「これだけのものを着けるのですから、気分が悪くなったりしては困りますからね。大勢の弟子たちや関係者やお客様へ、舞台に立つ責任を考えれば、自己管理は大切なことです。努力し続けていくこともね。私の父(十三世片岡仁左衛門)は常々申しておりました。役者は一生修行、あの世があるならあの世に行っても修行やと・・・」
 
   
片岡我當プロフィール
本 名 片岡我當
屋 号 松嶋屋
 紋  七ツ割丸に二引、五枚銀杏
芸 歴 昭和15・10片岡秀公で大阪歌舞伎座「堀川」のおつるで初舞台
昭和46・2大阪新歌舞伎座「桜しぐれ」三郎兵衛、「二月堂」の良弁で五代目我當を襲名
賞 他 大阪府民劇場賞、十三夜会賞、真山青果賞大賞、京都府文化功労賞ほか
「ほととぎす」同人、同志社大学校友会参与、日本俳優協会監事、伝統歌舞伎保存会監事、カナダ・カルガリー名誉市民、ワシントン名誉州民
 
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