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これからやってみたいことはなんですか?

英華「あーーうーん…。ええ舞台やりたいねぇ。ネタ数増やして」

それは<女道楽>ですよね

英華「うん。昔の漫談やる人は、ご主人が新聞記者やったり構成作家やったりして、ご主人がネタを書いてくれる場合があったけど、ひな子師匠の場合は、松竹に文芸部があって、そこに台本書いてくれはる先生がいてはったけど、今はそういうのは…落語作家の方はいてはるけど…。放談にしたら使い捨てやろ?時事ネタは昔とちごうてサイクル早すぎんねん。ひとネタ、三週間がアブナイねん。その間に、事件、山盛り出来てるから…。すぐ作ってやるっていう…私に創作能力があればいいねんけど…。あとは、いろんな大阪の古い唄とか芸妓さんに習いに行ったりしたいねん」

わぁ!それ、ぜひぜひお願いしたいです

英華「あと、今、姪っ子がタップやってて、一緒に。それと、サックス吹いてんねん」

ひょ〜、こりゃまたそこまで行きますか。リサイタルっていうか、独演会みたいなこと、してほしいなぁ

英華「うーん…。いや…、まだ、私の中では、まだお客様に対して、商品になってないというか…。お金をいただいて2時間なり2時間半なりお見せするというのが、自分ではまだ嫌なの。もっと、なんか…なんか、足らんねん。自分が真っ直ぐ向いてるもんが…まだ、道路が整備されてなかったり、橋が架かってなかったり…。んで、橋架けたら、私の後ろにおる人が、またしてくれるかもしれへん。大阪でひとりでやってますっていうのでは、あかんわけやん?私が<女道楽>をやって、これを誰かが“ええな”と思って来てくれる魅力がまだないから、それがないわけやからな」

気がつけば、5時間ほどしゃべりっぱなし。
それでも話は尽きない。
一つ一つの逸話が臨場感たっぷりで、セリフごとお聴かせできないのが残念だ。

英華師匠は、私にこう言った。
「芸に関わってる人間は、みんな芸人や。あんたも芸人なんやで」

落語が好きで好きで、噺家を蔭で支え、これからも支え続けてゆく人だけに、その言葉は、私にとって、いろいろな意味を含んでいるようで、そして、何よりも嬉しかった。
噺家に憧れた少女が、巡り巡って、寄席囃子という、噺家にとってなくてはならない、というより、噺家と一体になって舞台を創る裏方になった。
ほんまに好きで好きで堪らん世界に生きている喜びが、全身から伝わってくる。
だから、ひたすら自分を磨きつづけているのか。
その姿勢は、貪欲で、だが、あくまでも謙虚だ。
<寄席囃子>、<女道楽>の内海英華。
ここにも、<一期初心(いちごしょしん)>の道を行く人がいる。

※一期初心(いちごしょしん)…生涯、たゆまず芸の高みを追求し続ける、能役者のあるべき姿を世阿弥が表した言葉。その時々の初心(=グレードが上るごとの、謙虚で緊張した気持ち)を忘れなければ、終生、芸は衰えないという。

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