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何と戦っているのでしょう 平加屋吉右ヱ門
 MONOの芝居には必ずゲームもしくはゲームの要素を持った場面が含まれている。今回も読み上げた住所から地図の上での位置を見つけることに競争をはじめる。もうひとつ面白い言葉の使い方が出てくる。今回は、役所の係長の台詞とイタリア人の挨拶。使われる擬音や擬態語が、一般に使われるものと少し違っている。また、登場する時の挨拶などは京都の町のどこかで拾ってきた言葉なのかもしれない。どちらもこんな人がいそうなのだが、少しへン。

 これらの仕掛けは、あっという間に笑いとともに、舞台の設定の中に引きずり込んでいく。しかし、MONOの舞台の根底に流れているのは、自分たちを取り巻く社会の僅かな変化を感じつつ、その中で生きる自分たちの事を描くことにある。

 「京都の町を守るために」という目的のために、一旦は手放した西洋建築の元仏教寺院の喫茶店ではあるが、「北崎町」の建物を取り壊し駐車場にしようという行政の方針転換に反対し、店主夫婦、高幡得治と早苗はそのままそこに居座り反対運動を始める。そこへ次々と賛同者が加わる。

 近所に住む板倉夫妻。夫の実はこの地区にあった工場で働いていたが閉鎖となり失業中。妻の奈美子はこの地区にあるカルト教団に興味を持ち、信者に共感している。

 帰国までの2日間をこの運動に参加しようと、軽い気持ちで参加するイタリア人・真中。イタリアですし屋を経営する日本人を両親に持つイタリア人旅行者は、国籍はイタリアでも、本人の意に反してイタリア人として受け入れられているわけではない。

 行政から彼らのところに立ち退きの交渉へ派遣された男、中野、彼は役所の中で京都以外の出身者として仕事の上で疎外された状況にある。交渉を繰り返すにつれて、だんだんと反対運動に共感し、遂には彼らと一緒にこの喫茶店に泊り込むようになる。

 中野の上司、庄内は一方的にこの喫茶店の取り壊しを告げに来るが、得治と同郷ということが分かると、急速にうちとけ、この反対運動の人たちのことを気遣い始める。

 そんな折、この町にあるカルト教団のメンバーが、京都の室町に放火するという事件を契機に、一緒に活動を進めようと、地図にまで記録していた僅かに残った近所の人たちからも、反対運動がカルト教団と同一視され、理由のない嫌がらせを受けるようになる。

 不法占拠、不法な活動、行政からの圧力、肉体的な危害を受け次第に減っていく反対運動の、残ったメンバーである店主とイタリア人の二人は、打開するすべが見つけられないままこの喫茶店に追い詰められ、行政がこの「建物」を破壊するのを呆然と窓越しに眺めている。

 現代という時代と、そこに住む市民、住民に対して土田がいち早く嗅ぎ付け、我々に投げかけた疑問または不安や恐怖が根底に流れている。一緒に戦おうと考えていた人たちからは迫害され、敵だと思っていた人から思わぬ助けを受ける。しかし確実に時代は我々が望んでいない方向へと動いている。この作品の中には、「その鉄塔に男たちはいるという」や「初恋」と共通するものがある。



キーワード
■恐怖 ■不安 ■戦い
DATA

同公演評
内なる矛盾を破壊から再生に向けて … 西尾雅

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