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リクエストに応える誠実さ 西尾雅
劇創ト社は今回の公演をもって劇団を解散し、今後は主宰・城田の個人ユニットとして活動するとか。主宰の体調不良や劇団員の退団等で前回公演「YELL!」(再演)から約1年のブランクを経た本作には、おなじみの助っ人が揃う。劇団有終の美を飾るのは、お得意の歴史大作(いずれも上演時間は2時間半超!)ではなく、別テイクともいえるショートストーリーオムニバス集。

普段は音響スタッフに徹する谷口大輔をDJに見立て、お便り紹介でつないで3本の短編を編む。朴訥なしゃべりに、役者では出せない味わいがにじむ。それにしても、谷口はじめ音響王子・児島塁やデス電所の作曲・和田俊輔など音響スタッフにイケメンが多いのはなぜだろう?

今回も上演時間1時間半の謳い文句ながら、終わってみれば2時間強の長丁場。コント集団・LOW POWERSと共作のクレジットは、1本目の台本が桂正樹によることとチャーハン・ラモーンがディレクター・ケンスケ役(今回は上司の不興を買って左遷中、ディレクター職を解かれている設定)でDJ・ダイスケとおなじみコンビゆえ。

これが、久々の軽いご挨拶代わりの1本。続く城田作の2本、3本目がト社の集大成。劇団の歴史と思いのたけが詰まるいぶし銀の逸品に仕上がった。

その2本目「birth」は人類が死に絶えた超未来で、いまだマザーコンピュータのプログラムどおり戦闘を続けるしかないアンドロイドの閉塞感を描く。戦争を開始し、彼らに戦闘を指示した人類がもはや存在しないのに、仲間同士それも敵味方日替わりで戦うアンドロイドたちの不条理。

戦闘で仲間は次々亡くなり、残された者は減る一方。そこに「死にたくない」とつぶやき、戦闘を忌避するあり得ないアンドロイド(山口)が現われ、彼女に同調したアンドロイドたちがプログラム制御を振り切ってマザーコンピュータに反乱を起こす。

「birth」がハリウッド製作のCG映画なら、3本目「デッドマン・ブギ」は一転して進駐軍占領時代の闇市が舞台の日活アクション映画。闇市を取材する新米作家が狂言回しを務め、作家が巻き込まれた闇市の利権争いを描く。

闇市をまとめる義理人情派のボス(末満)から土地の権利を奪おうと、GHQ関連の業者(藤岡)やその手先、私腹を肥やすのに忙しい警察らが、しつように攻撃をかける。が、ボスの戦友の型破りな弁護士(佐藤)らの助けで闇市は守り抜かれる。その闇市跡が、今ラジオ局のあるこの地だ。

リクエストのオンエアを待つリスナーがいる限り、放送局は守る。それは観客が待つ限り、また舞台に戻ってくるとのト社の決意でもある。人類が滅びてもアンドロイドたちが生き延びる。再生し、復活を果す。芝居にこめられたシンプルなメッセージが心強い。

2作品でヒロインを務め、つなぎのDJシーンでも早変わりのAD役で出ずっぱりの山口いずみがまぶしい。かつてト社を支えた山口敦志や和田哲也、千都穂、梅崎尚子に代わる堂々の成長ぶりに涙がこぼれる。

後藤啓太の身体能力の高さにもあらためて驚く。吉本新喜劇に移籍した佐藤太一郎(元ランニングシアターダッシュ)も久々の小劇場で水を得た魚のように跳ねる。藤岡悠芙子(元南船北馬一団)の元気な姿もうれしい。

小道具を使わず(ピストルなども撃つマネだけ)、身体だけのスピーディな表現がト社の身上。全編に男気があふれるが、あくまでスタイリッシュで都会的、そして潔い。細かくカット割りされたシーン構成などは、舞台から映像表現への挑戦だ。

役者たちが一糸乱れずに周回移動する様は、カメラがクレーン移動する映画のよう。そこに舞台ならではのストップモーションが加わる。舞台装置(盆回し)を使わず、全員が同時に走り出し、同時に止まって、走り出す前の同じポーズから動きを続ける。驚異のシンクロは、目の前で起こったことが信じられないイリュージョンのようだ。

阿吽の呼吸での移動は稽古の賜物。そこにプロデュースではなく、長年意思疎通を図ってきた劇団の強みがある。劇団員でこそないが末満健一、石原正一らも客演でおなじみ。これほどの一体感を解散で失うとしたら惜しい限り。舞台監督としても活躍する城田ゆえに人脈は豊富、これからも高度なコンビネーションと男気あふれる芝居を望みたい。

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