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表裏オセロゲームは人の縮図か 西尾雅
軽妙な会話の裏に辛らつな本音。結婚披露宴の新郎控え室でのハプニングが関係者の隠れた事情と感情を明らかにする。披露宴が表向き、建前なら控え室は裏の真実。表面のお祝い事ですまない結婚の内情が白日の下にさらされる。動揺や説得、沈黙、ごまかし、なだめ、怒り、告白が輻輳。会話の応酬で二転三転する力関係の結末はいかに。次々「うらをかえす」展開に息つく間もないシチュエーション劇。

披露宴たけなわの控え室に忍び込み、新郎のお色直し衣装にハサミを入れようとする女。発見した新郎担当の松平(石本径代)と後輩・島木(木村雅子)が問い詰めど黙して答えず。彼女・真衣子(山本麻貴)は新婦の友人代表だが、実は新郎の元カノ。新婦の強奪婚を真衣子も割り切ったはずだが、いざ土壇場で衝動的な行動に走る。新郎・小野田(尾方宣久)にしても真衣子にまだ未練、新婦とその父親に押し切られた結婚に実は婚前プルー。

女友達の友情と男女の恋愛感情がすれ違ったままこの日を迎えた2人は本音で話してないことにようやく気づく。宴の中止を言い出す小野田に真衣子は破談は本意ではないと式の続行を勧める。真衣子は友人の甘えや男の狡さに泣き寝入りする自分を許せなかっただけ。小野田から譲歩の言葉を引き出せば真衣子も得心できる。あらためて結婚を了解させた小野田が駆け引きに勝利したことになる。

が、新郎を心配した新婦(登場しない)がドア越に宴中止の小野田の言を聞いてしまう。あわてて新婦を追う小野田。その後は控え室から窺えないが、小野田がハサミを手にした真衣子の自傷を恐れたと言いつくろえば納得するかもしれない。取り繕う体面の裏で、わずかな時間に非難のジャブと弁解の逃げがつばぜり合いを重ねる。たとえ披露宴が無事終わろうとも、とりあえずのシーソーゲームが決しただけ。結婚後も勝負は永遠に続く、その相手を変えて。

小野田と真衣子のもつれた感情を解こうとする松平は、実は真衣子と同じ経験を持つ。実妹がカレを奪って結婚、血を分けた妹と今も絶縁中なのだ。独身と式場勤務を続けるのも気持ちにまだ折り合いがつかないため。が、真衣子と新婦の葛藤を見て妹を赦す。

とげとげしい現場で緩衝材の役目を果たした島木の功績も大きい。硬派の松平といまどきチャッカリ娘の島木がお互いの欠点を補う。空気読めず、タメ口きく後輩の思わぬケガの功名。

控え室に侵入した真衣子は本当に披露宴を台無しにしたかったか。ハサミは手にしただけで、最後まで逡巡し制止されるのを待っていたのではないのか。二股愛の小野田が直前までスピーチで悩むのも迷いがあるから。結婚を祝う喜びと嫉妬の恨み、結婚に踏み切るか中止するかのためらい。表裏どう転ぶかは実は相手との駆け引きによるのではない。問題は自分の本心にある。うらをかえすあまりに人は自分を見失う。

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