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白蓮の針 松岡永子
 泥の中から清らかな花を咲かせる蓮。「白蓮の針」は題名通り、幕末、大坂どぶ板長屋に住む浮世絵摺りの女職人、お辰の物語。もともとベテラン女優のために書かれたこの芝居を、劇団の新人、若手で上演する。十代から二十代前半の役者による、文字どおりの若手公演。

 貧乏長屋に住む摺り師の娘お辰は、頭もよく度胸もあって、混乱した世相を利用して才覚を現していく。金融業、海運業と、まさに生き馬の目を抜くように他人を出し抜いて富を築いたお辰も、体が弱ったときふと弱気になる。そのとたん、組んでいた仲間に裏切られ、金はすべて持ち逃げされる。
 恨み言は言わない。自分もそうして生きてきたのだという自覚も、自恃もある。
 そんな若い日々を、長屋の片隅で浮世絵を摺りながら思い出す、話。

 若い日の追憶とか、少女の頃の淡い思慕とか、消え残る燠火を見せる老女のシーンよりも、エネルギーの爆発する若い頃の方が断然面白い。役者自身が若いのだから当然だ。
 初めて見た舞台では、自分では何もできないお嬢様の役がぴったりだった山田山未舟が、ほとんど出ずっぱりでエネルギーの塊のようなお辰を演じる。若いと成長も早いのだ、と思う。
 お辰に対するもう一人の娘。身を屈して踏みつけられながらも、あたしは百姓の出だから慣れてると言い、最終的には財産を横領して図太さを示す役の桜井盤も、強さを感じさせる。
 犯罪友の会といえばどうも男くさい感じがあるのだが、近頃は女優がいい。男優も若者が増えて劇団の平均年齢がずいぶん下がった。幅広い年代の役者がいるというのは劇団としてとてもよいことだろう。劇団は、同じ年頃の者が集まっていることが多い。目指しているものが近いから意志疎通しやすい面もあるだろうし、それゆえの限界もあるだろう。

 舞台で見ていると、ほんとうに今どきの若者はきれいだ。それは犯罪友の会でも同じ。
 すらりと伸びた四肢。骨太な、短く太い、という人物像とは体格からして違う。
 大切に育てられ、他人も大切にするよう教えられてきた者は、少し遠巻きに他人と関わる。若い劇団には、自分たちのそんな感覚を表現しようとするところも多い。臆病な自分を臆病なまま表現する。そんな「等身大」の舞台も悪くないし、その巧みさに感嘆することもある。
 だが、等身大になど満足できない者もいるのだ。
 彼らは決して巧みではなく、どちらかといえば不器用だ。背伸びしているつま先が見えるようなところもある。しかし自分に満足できない者には遠くへ投げるまなざしの強さがある。できるだけ遠くまで行くためには、そんな気持ちの強さが必要だろう。
 未完成であることの可能性を頼もしく思う。

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