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なにげなさ たいせつさ 松岡永子
 とてもいい舞台だった、と言ったあと、どのようによかったのかを言おうとすると困ってしまう舞台がある。今日の風は特別に心地良い、と確かに感じて、でも昨日や一昨日の風とどう違うのか説明できないのに似ている。
 特別に劇的なことは起こらない。ほんのり、とか、しみじみ、とか、ほのぼの、と形容されるようなお話たち。あゅーずの舞台はいつもそんな風だ。今回は特にそのほのぼの感、しみじみ感が心にしみた。
こういう何気ないお話が面白いか、退屈なものになるのかの境目は何だろう。その微妙なところを言おうとすると言葉になったところから違うものに変わってしまう気がする。手を触れると黒くなる青い鳥みたいだ。

 町を見下ろす小高い丘の上、大きな木が影を作っている。そこに交互にやってくる人たちのお話。
もう若くない女の話、というのは共通する。劇団自体そこそこの年齢の女性ばかりで、きらきらしくはなく、まろやかでやさしい。

一景「ぽっか・ぽか」
 道路舗装工事をしている女性たちが休憩にやってくる。まさにオバサンたちなのだが、オバサンというのは女子中高生の群に似ている。あっという間に荷物を広げピクニック状態。シュークリームの最後の一つを誰が食べるか、など他愛ない話をしながら休み時間のひとときを満喫している。
 きもの地で作ったニッカボッカをはいた化粧っ気もない中年女性。話題は若くないが、はしゃぎっぷりはまさに女の子。大声で笑ったり拗ねたりしながら、みんな仲間が好きで誰も悪意を持っていない。全員がそれぞれのことを思いやっているような理想的人間関係は現実にはあり得ないが、年齢を重ねると人はやさしくなっていつかこういう仲間ができるのかもしれないと夢みてみるのもいい。

二景「まちあわせ」
 一人の女がイライラしながら待っている。田舎から出てくる兄に恋人を紹介しなくてはならない。そのために売れない役者を雇ったのだが、彼が希望とは違うのだ。彼女の希望は、田舎に帰ってくるよう兄に言われないだけのしっかりした相手。とにかく話を合わせるためにリハーサルを重ねさせる。わがままで高飛車な女といいかげんな男。一緒に時間を過ごすうちにわかってくるお互いの事情。それはとてもありきたりな話(不倫や大企業の非人間的論理への反撥)で、ただそれに寄せる互いの心情のやさしさが貴重だ。
 唯一の男性出演者・立石浩太郎の、映画「アマデウス」のモーツァルトのような無礼さと不器用さがとても似合っている。

三景「ひらり」
 妹の法事から戻ってきた女。妹のこともよく知っている友人と思い出話をする。妹はお子さまランチが好きで、でも大人ぶって食べなかった。いつのまにか本物の大人になって食べられなくなった。今日はレストランでお子さまランチを注文する。もちろん妹の分も。
 それだけの話を思い出を交えて描く。特別なことは何もないけれど確かにここには大切なものがある、という手触り。

 こういう舞台は本当に微妙で、見た回によっても印象が違うだろう。彼女たちのモットー通り、一期一会の舞台。

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