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血の通った幽霊 平加屋吉右ヱ門
 舞台じゅうに白木の棒が真っ直ぐ、無数に立っている。長いもの短いもの、その間を木の柵で囲まれた小道が交差する。中央には少し広くなった所があり、木のベンチが置かれている。今回は西田聖氏が舞台美術を担当したためかモダンな印象。暗転の代わりの一呼吸の静寂が時間の経過を示す。作品全体に品の良さが現れている。
 岬智朗(兄)と、同じ高校の同級生で今は母校の卓球部の顧問をしている関は、20年前に高校の卓球部の部室の火事で、岬達朗(弟)と友人遠山を同時に亡くしている。死んだ弟と、高校の同級生遠山に、墓地に呼び出される兄。この舞台が墓地であることが分るが、現代美術を観るようなこの舞台は、墓地というおどろおどろしさを観客に感じさせることはない。亡くなった二人はひょいと柵を飛び越えて兄や関に会いに来る。お化けでも幽霊でもないという二人に、戸惑いながらも、懐かしさと負い目を感じて生きている二人。
 亡くなった二人は世界中を行き来し、気楽な生活を楽しんでいる様に見える。昔の事を恨んではいないという二人。それどころか、生きている二人が窮地に陥っているのを知り、手助けをする。そこへ亡くなった二人の監視役の男がやってくる。彼も同じくあの世の人間。
 亡くなった二人は兄や友人を恨まないと頭の中では納得しているのだが、ついつい思い出す火事のこと。二人にとっては辛い思い出だが、それすら生きていた時の懐かしい思い出。しかし、とうとう兄や関に悔しい思いをぶつけてしまう。しかしこれはあの世に「生きる者」のご法度。その上兄たちの窮地を見かねて、この世の秩序を乱す形で助けてしまう。
 一方、兄と関は、度々現れる亡くなった者たちを、次第に、疎ましく思い、亡くなった者たちがあの世に帰るとほっとする。しかし現れなくなると、どこか寂しい二人は亡くなった二人と一緒に楽しんだ遊びを思い出し、二人だけで始める。
 翌年、二人の命日。つい供養を忘れてしまう兄と関。遅ればせながら、墓参りをする二人の前に戻ってきた弟たち。しかし兄たちを助けたために、もうこの世にも来れなくなりそうになる。助けを求める弟たち。ついに兄たちは、生きている自分たちの生活を犠牲にしても、亡くなった弟たちを助ける。監視役の男を含め亡くなった三人は、絆を感じながら満足感の中で、歩いてあの世に帰っていく。すぐそこにある別の場所へと移る二人。しかし、もう戻って来れない二人。日本人の心にある肉親の死というものが素直に表現されている。
 「20年前は罪悪感で、弟の死を悲しめなかった。しかし今は普通に悲しむことができるようになった」「友達が去るのを悲しめるのはいいことだ」2004年女優二人を含む4人がこの劇団を去った事も重なって見える。
 おかしくて、悲しく、手触りの暖かい話。

キーワード
■愛 ■友情 ■別れ
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