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地下深奥からあふれる感情 西尾雅
ご存知のとおりウイングフィールドはビル6階、エレベータで上がる劇場を逆にビルの地下室、屋上に上がる収納階段を地上の部屋につながると見立てる。地下はAVビデオの制作現場、文字通りアングラを舞台に人間の隠れた感情を暴く。細長い劇場で舞台は通常奥に取るが、今回縦横を逆に使い、3列ひな段客席を壁面に細長く並べ、舞台を入口からたっぷり取る。観客すぐ前が役者のアクティングエリア、至近距離がアンダーグラウンドの生活を覗き見る錯覚を与える。

社長失踪で閉鎖、残務処理中のAV制作会社。が、退社した真鍋(林)に事務を仕切る三井(片桐)が声かけたことで仕事再開。前社長の恋人でもあった三井は会社を立ち上げた真鍋とも実は三角関係。使えない部下・坂田(梶尾)やこれを機に退社したパート主婦・大和田(武田)、主演女優・卜部(森崎)、隣室の自称アーティスト・なな(桝野)が出入りする事務所。いったん活気を取り戻した会社からやがて真鍋までが姿を消すまでを描く。

人が隠し持つ内面。真鍋の退社理由は、芸術志向が前社長と合わないとされたが、三井との三角関係を知っての確執が原因とわかる。退職した真鍋はパチプロで稼いでいたが、会社復帰後のAV監督の才能を見ればパチンコに満足していなかったことがよくわかる。坂田は真鍋に憧れ入社するが才能なく、裕福な実家から資金調達を重宝されるだけ。その坂田を蔑む大和田は姑との軋轢、子宝に恵まれない不運を坂田非難に転化する。芸術家を名乗るななの経済を支えるのはコンビニバイト。こうありたい理想と現実は乖離、人はつくづく表面と異なる内面を持つ。

衝撃は噴出する人の想いにある。前社長失踪に耐え、残務処理をこなす冷静沈着な事務担当・三井が爆発する。真鍋と縒りを戻し仕事復帰した彼女は、けれど真鍋失踪を予知して脅え、狂乱する。孤独を耐えた後に獲得した平安を再度奪われる恐怖。恋人のいない寂しさと怒りが彼女を襲う。恋はつまるところ自分の拠りどころ、存在理由。存在理由をなくす不安が彼女を乱す。

不安をもたらすのは意欲と才能、理想と実態その落差。芸術志向のビデオ監督と生活費を稼ぐためのパチプロ、自称芸術家と店長代理を務めるコンビニバイト、映像作家をめざす出来ないアシスタントと酒蔵の御曹司、仕事が出来るパートと子どもを生むことを求められる嫁。抱える理想とのギャップがマイナスに働きアンダーグラウンドに叩き落とされる。思い描く理想の遠さ、その距離に絶望して人は地上を仰ぎ見る。

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