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心ぬくもる小劇場版人情喜劇 西尾雅
松竹新喜劇と吉本新喜劇を思わす「コテコテの人情劇」を標榜。取り違えから生じる騒動をちょっぴりハッピーエンドに納める手腕は小劇場でも傑出。ウェルメイドなストーリー展開をあえてコテコテの笑いに包む関西の気質に拍手。今月の松竹座・花形歌舞伎で「女殺油地獄」が上演されたが、凄惨な殺戮の場面で加害者と被害者が油にすべる大仰なシンクロ動作が笑いを誘う。関西の笑いのDNAは世話物狂言に遡る。

おマヌケが戯画誇張されてはいるが等身大の登場人物。彼らが巻き込まれるドタバタに観客は笑うが、自分のミスに引き寄せ身近な愛着を抱くようにも見える。観劇の後味がさっぱりしているのは、出来心の落し物失敬や逆に迷惑な世話焼きなど困ったちゃんはいても真の悪人がいないこと。勘違いや意思疎通の不手際は本来トラブルだが、人間社会に必ず生じるもの。それに笑いをまぶすことで円滑な人間関係の潤滑油に切り替えて丸く治める。

鉄道高架下の立ち食いうどん屋が舞台。店の主人は銀婚式で海外旅行中、初めてのハワイに不安な様子が、留守を頼まれた文房具店主(上田)との電話で伝わる。今どき海外旅行に不慣れな主人にこの店の庶民性がわかろうというもの。商店街の世話役でもあるピンチヒッター店主のおせっかいとおやじぶりもたっぷり。いつもながら装置の造り込みに驚く。メニュー札や提灯、店先のタイルの汚れ、立ち小便の匂いまでしそうなガード下の風情まで神経が行き届く(柴田)。

3年前に同じこの店で再会を約したカップル(北村、後藤)。委細を知る店主は留守、男はパチンコ好きの労働者(森澤)に捕まり、女は臨時店主にバイトと間違われ、2人はすれ違いが続く。そこへ商店街で強盗事件が発生したり、大阪にあこがれる東京の役者(奈須)が試食に訪れたりと混乱に輪がかかる。

モラトリアムなお坊ちゃん彼氏と歌手を目指し家出上京するも挫折して故郷に顔出しにくい彼女の造形は吉本新喜劇にありそう。が、違和感ない2人のキャラが今どき。ハンサムなのにワンテンポズレた北村と、背筋伸びたキツめの後藤がお似合い。が、勘違いで事態を複雑にした張本人のおやじが、最後に度量を見せる。これも一種の自作自演、自己責任、自画自賛。元の鞘に収まってちゃんちゃんといったところ。迷惑だが愛すべきこういう勘違いおやじこそ人生の七味。あやしい関西弁で本人だけすっかり関西人のつもりの役者と寸借詐欺や窃盗に走る貧乏労働者も憎めない、いいダシが出てる。


キーワード
■コメディ
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