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+ 徳山由香

国立国際美術館非常勤学芸員などをへて、コンテンポラリーアートの研究、企画、運営に携わる。 2005年10月より文化庁在外研修によって、フランスにて研究・研修に励む。

+ 田尻麻里子

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+ ピエール・ジネール

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PROFILE
SOAP

北九州市小倉のギャラリーSOAPを訪ねた。台風のなかを広島からやってくるN-mark のミーティングキャラバンの到着を待つ間、SOAPディレクターの宮川敬一さんからお話を聞いた。

SOAPは、北九州市小倉駅から徒歩5分の地に1997年5月にオープンしてから7年目を迎えるアートスペース。アート、音楽、映像やレクチャーシリーズなど、様々なイベントを開催してきた。
SOAPの活動のユニークな点は、意志を持って動いているということである。それは、自らアーティストユニットSecond Planetを率いるディレクターの宮川さんが、アートの状況に向き合いながら自分達の活動の動機を見出していく、柔軟な意志といえるだろう。具体的に説明したい。1994年にSecond Planetを結成以来、ストリートを舞台にしたゲリラプロジェクト「パラサイト・プロジェクト」や廃虚を使った展覧会などを展開した後、1997年にSOAPをオープンした。ライブイベントなども行っていたが、当初は作品を見せるための−展覧会を目的とした−スペースとしての機能を重視していた。また、SOAPはギャラリーと共にカフェ機能も備えており、いわゆる美術関係者以外の人々が多く訪れるようになった。そのような環境、すなわち美術関係者だけに閉じられていない空間の中でアートを実践するためには、ギャラリーという空間での展覧会という形式だけでは限界を感じ始めた。そこでSOAPは、99年頃から他のジャンルの表現者とのコラボレーションや積極的に街へ出ていくプロジェクトを始める。商店街、小学校や商業施設内の様々な場所を使った企画では、アーティストは「用意された場」ではない日常の消費空間の中に食い込んだ表現が求められた。施設を管理する側の人間との折衝は当然のことだが、これは担当者がアートに関心を示すかそうでないかに多くを左右されるため、それ自体が目的ではない。つまりSOAPが目指しているのは、「社会にアートを!」といった普及目的ではなく、それよりもむしろ、アートに関わる様々な人が集まってプロジェクトを立ち上げるための場、プラットフォームカフェ、トランジットスペースとしての機能である。したがって幅広いジャンルのイベントを開催するのもSOAPの特徴の一つで、とくにサウンドのライヴや映像の上映会には地元の熱心な観客が多く集まり、プロジェクトの活動を支えるとともに、実際に参加する者もでてくるという。
「プロジェクトに参加すること」−そこに彼らは「そのことによって、ネットワークと思考の機会を得て、自分達の作品・研究にフィードバックさせる」ことを求めている。これを実践しているのが、01年から始めて現在も継続中の RE/MAPプロジェクトである。美術だけでなく、建築、音楽、比較文化、カルチュラル・スタディーズ、社会学、植物学等、異分野の研究者達がRE/MAPという概念のもとに集まり、都市空間を素材とした共同制作、レクチャーという形をとることによって、様々なバックグラウンドを持った人々、さらには海外アーティストやアートスペースとの交流、ネットワーク化を図っている。
つまるところSOAPに一貫していえることは、「自分たちの楽しみ、関心の拡がりのために活動している」ということだろう。それが彼らの意志であり、アートと社会に対峙することといえる。それは、日本の一地方都市におけるアートの実践であり、ひいてはこの地でアートを実践するという価値をつくりだすことである。RE/MAP に参加した福住廉の言葉「アーティストでもなく、鑑賞者でもない、表現を行為する私たち自身を、便宜的にアクティヴィストと呼ぶならば、そうしたポジションによって初めて、美術と社会を媒介することができる」に、アクティヴィスト=実践するものとしてのSOAPの意志とパラレルなものを感じ取ることができるだろう。アートの自律的な価値を信じて発表し続けるだけでは、その価値を啓蒙的/普及的に社会に訴えて出るだけでは、いまここで生きている自分達にとってリアルではない。SOAPは、自分達のアートが、社会や私たちの生活と絡み合っているからこそここに生きている、ということを知っている。だからこそ彼らは、多分野の研究者とともに、社会の中でアートの着地点を探りつつ、アートにおける社会との結節点を探っているのだといえるだろう。

(徳山由香 取材11/07/2003、09/09/2003)

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ブロークン・コンソートのライブ
上野俊哉プロデュースによるレクチャー&パーティー

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