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小粒のメセナ?個人の趣味?アートを支える多層なアクターに突撃


#2:エコールCP×稲垣智子

「作品は私のであって、私のではないように思える」− 稲垣智子さん(Tomoko Inagaki)
1975年 大阪府生まれ
2001年 英国国立ミドルセックス大学美術学部彫刻科卒
現在 アーカスプロジェクトに参加し茨城県にアーティスト・イン・レジデンス中 
http://www.arcus-project.com/

--------- 個展歴 ---------
2002年 「Dream Island」(CAS/大阪)
2002年 「sea」(OBP/大阪)
2003年 「Underneath the Twinkling Stars」(Krinzinger Projekte/ウィーン)
2004年 「Soap Opera」(Art-U room/東京)

------- グループ展歴 -------
1998年 「DAIRY」( Quicksilver Gallery/ロンドン)ブリュッセル、パリに巡回
2000年 「BANG」 (Standpoint Gallery/ロンドン)
2000年 「第三回国際実験パフォーマンスアートフェスティバル」(ロシア)
2001年 「The National Review of Live Art」(イギリス)
2001年 「BLANK HUNTING 」 (下高井戸商店街/東京)
2002年 「神戸アートアニュアル2002『ミルフィーユ』展」(神戸アートビレッジセンター/兵庫)
2003年 「こもれび展」(水戸芸術館現代美術センター/茨城)
2004年 「大阪・アート・カレイドスコープ『OSAKA 04』展」(CASO、大阪府立現代美術センター/大阪)
2004年 「Art Court Frontier 2004」(ARTCOURT Gallery)

------- その他活動歴 -------
1999年 「Ray Finnis Award 1999」(イギリス)
2002年  資生堂ADSP入選
2004 年  ARCUS PROJECT 2004


インタビュアー(辻・以下「T」)−
こんにちは。この8月から茨城県守谷市を拠点とするアーカスプロジェクトに参加し、あちらで アーティスト・イン・レジデンスを行うと聞いています。また、同じ月に東京で個展も開かれるとか。相当お忙しいのではないですか。

稲垣(以下「I」)−
そう。まだ、荷造りもしていないのに、今日も朝まで個展のDMを入稿していたり。

T−
そんな折ですが…。
稲垣さんが、アニュアル2002で出展された作品「最後のデザート」は、いかにもおいしそうと思える洋菓子や、美しい花でデコレーションされた繊細なガラス机とキスを繰り返す男女の映像から成るインスタレーションでした。
作品を完成させるために、なぜエコールCPの北村さんの協力を得る必要があったのでしょうか。

I−
ごく単純に、人に見られて「美しい」と思われるお菓子を、素人の私には作れないからね。
T−
稲垣さんが展示するお菓子に求めた、「美しさ」というのは?

I−
生菓子だから誰かが作ったのだろうけど、作った人の個性とか人となりが、あまりわからないようなものにしたかったのね。ほんとに、まるで商品のように完成されたもの。だれかが作った事が想像できる箇所があると、見るひとはそこにひっかかってしまうと思う。 無機質というか、みんなが思い描く「お菓子」といえば「これ」と疑う必要がないようなものが欲しかった。それは、素人ではできない技じゃないかな。

T−
ナマもので「展示」に耐えられる美しさを保持するのは、高度な技術が必要ですよね。

I−
しかも「最後のデザート」のお菓子は、人が口にしても大丈夫とされる基準値の添加物を、最大限入れたかったから。でもね、展示期間の1ヶ月間もお菓子の状態を保つには、食品添加物に加えて、お菓子職人さんがもっている保存技術に助けられた。食品を保存するためには、水が触媒となって腐敗するのを防ぐために、食材の水分を減らすといいらしい。シュガークラフトとかそうだよね。
それと、ある成分の濃度だけを極端に高めてしまうと、生物が生きられなくなるんだって。
添加物ももともと塩分や糖分を高めすぎることで、味が変わって食べられなくなってしまうのを防ごうと発想されたものだったらしいよ。

T−
さすがくわしいですね。その技術を貸してもらうために北村さんには、どのように話したの?

I−
協賛とか協力先は大抵自分で見つけてくることが多いんだけど、この時はアニュアルのマネジメントインターンの津田さんに協力してもらっていて。彼女が見つけてきてくれました。それで、実際にお会いする時は木ノ下さん(アニュアル事務局-神戸アートビレッジセンター美術担当)と一緒に。提案書とイメージ図を持っていって「こんなお菓子がつくりたいんです」と説明しましたね。

T−
協賛を依頼しに行くときは、いつもそうしたプロジェクトリーダーのような人と一緒にいくのですか?

I−
そう。1人で行くことはあまりないかな。やっぱり会社には会社の形式があるでしょう。ただでさえ訳の分かりにくいお願いをしにいくのだから、アーティストだけで行くより、違う視点で説明してくれる人が一緒にいてくれた方が、理解を得やすいよね。

T−
説明しての反応はどうでしたか?

I−
私はすごくラッキーで、いつも協賛や協力をしてくれる人はパーソナリティーを含めていい人ばかりにめぐりあえてるからなぁ。中でも北村さんは、特にお世話になりました。本当に良い先生で、生徒想いだし、ちゃんとこちらの話しを何度も聞いてくれて、デザインのアドバイスをくれたりと色々一緒に考えてくれたの。あんな先生だったら私も習いたいと思ったな。
協力してくださっている間も、「なぜ、こういうものを作りたいのだろう」という疑問は、何度もお持ちになったことだろうけど。

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