制作者インタビュー（２）　小倉由佳子 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　聞き手：神澤真理 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　インタビュー構成：メガネ 　関西のコンテンポラリーダンスの発展に多大な貢献をしてきたアイホールに、「優秀な制作さんが入ったらしい」という噂を耳にしたのは確か2001年。その噂の的で、後にフリーランスとなられてからも、「これは」と思うダンス、演劇公演の現場に必ずといってよいほどにこにこ立っておられるのが、この4月にアイホールの新ディレクターに就任された小倉由佳子さんだ。以前からお話をうかがいたかった気鋭の制作者に、アーツマネジメントを志す神澤真理さんに、“先輩インタビュー”をしてもらいました。（2008年1月28日にインタビュー＋4月25日に追加の質問に答えていただきました） ■ 制作という仕事との出会い 神澤：どのように制作というお仕事に就かれたのですか？ 小倉：ちょっと長くなりますが。私は、朝日新聞で言うところのロストジェネレーションで、就職活動をしてもみたんですけど、これといった目標もなく、成果もなかなか・・・。それで、どうしようかなと思っていたときに、IMI（インターメディウム研究所）という、アート系の知や技術を幅広く学べる学校の広告を見て、もう一年勉強することにしたんです。美術や舞台に興味があったので、何か今後のきっかけを掴めればと思って。 　その学校には選択肢がたくさんあったので、授業は取れるだけ取ろうと。でも、自分が実際に創作する側、アーティストになれる人間ではないということは分かっていました。それで、マネジメントに興味を持ち、美術と舞台芸術の両方の授業をとった結果、最終的に舞台のほうにゆくことになりました。それは、舞台芸術の講師、花光潤子さん[魁文舎主催]の現場実習で、まぁ舞台の醍醐味だと思いますが、これだけたくさんの人が関わってひとつの何かを作るということに、単純に、カタルシスを得てしまった部分もあります（笑）。また、学芸員資格も要らないですし、学閥にあまり捕われずいろんな出身の人が集まってきている舞台芸術のほうに可能性を感じました。なにより職業として、何か自分がやれることが残されている、まだ開拓されていないところがあるんじゃないか？　生意気にもそんなことも思っていました（笑）。 　舞台制作を職業にしたことに関して、自分でポイントだったのかなと思うのは、ちょっと手伝ったり、あるいは、ボランティアで舞台に関わりたいというのではなく、絶対に職業としてやりたいという気持ちが強かったことだと思います。もちろん、学生や一般の方がアートの現場に関わるアートボランティアは意義深いことで、当時は、樋口貞幸さん[現Art NPO Link代表]がやっていた「ARTS STAFF NETWORK」があって、このことに興味のある同世代の人たちも、周りにたくさんいました。でも、繰り返しになりますが、自分はやっぱり仕事としてやりたいと。それで花光さんに相談したら、舞台の仕事に足を踏み入れる最初は、業界全体を俯瞰してみることができる劇場がいいだろうと。そして、アイホールのプロデューサー、志賀玲子さんを紹介していただいたんです。もちろんすぐに仕事があったわけではなく、最初は募集がないというお返事をもらって、それならば、よりたくさんの現場がある東京にと思って、引っ越したんですよ。でも面白いことに、東京に越した次の日に高熱が出て動けなくなり、３日後に熱が下がってさあ動き始めようと思ったところに、「アイホールでアルバイトの空きが出たのでどうですか？」という知らせが入ったんです。一体、何しに東京に行ったんだか（笑）。 　アイホールでの1年目はアルバイトで、企画スタッフのアシスタント的な仕事やチラシの配布・折込手配、劇場の日常業務を経験しました。そこでも、ダンス企画のマネジメントに関わりたいと、わりとずっと言い続けていました。それまでのアイホールのアルバイトの人たちは、舞台に立ったり、実際に演劇をしていた人が多く、私みたいに制作だけを志望する人は珍しかったみたいです。たまたま入った翌年に、スタッフを増員する、それもダンスプロデューサー、志賀さんのアシスタントにあたる職種をという話があったときに、「じゃ、小倉さんで」と。